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第97話 たまには恋人らしく4p

(天谷って、もしかして俺の事あんまり考えて無い? 俺達ってこんなんで付き合ってるってマジで言えるのか?)  日下部は心の中で疑問をぶちまける。  久しぶりに一緒にいる時間が持てたのに、カフェでお茶だけする関係。  お互いの気持ちも確かめ合った事が無い。  その事に関しては日下部も悪いのだけど。 (もう帰ろうか)  日下部がそう思った時。 「あの、日下部。俺、日下部と一緒にいるだけで楽しいから。だから、特別な何かとかいらないから。だから、だから、俺のしたいことは、日下部と一緒にいる事、だから」  たどたどしく天谷がそう言った。 「天谷……」  日下部の胸が熱くなる。  急に天谷が愛おしくなる。  独り占めにしたい。  離したくない。  そんな思いが日下部の頭の中をいっぱいにする。 「じゃあ、これからウチに来るか?」  日下部がそう言うと、天谷はコクリと頷いた。  途中コンビニに寄り道して部屋に着いた二人。  部屋に着くと日下部はさっさと部屋の中に上がってしまった。  天谷は玄関口でグズグズとスニーカーを脱いでいる。 「早く上がって来いよ。扇風機付けたから」  日下部は玄関から上がって直ぐにある台所の冷蔵庫から麦茶を取り出してグラスに注ぎながら天谷に声を掛ける。 「うん」  やっとスニーカーを脱いだ天谷は「お邪魔します」と言ってのっそりと部屋に上がった。  天谷の額にはうっすらと汗がにじんでいる。  カフェで涼んで来た日下部と天谷だったが、部屋まで来る道を歩いているうちにすっかり熱くなり、汗を掻いていた。 「扇風機で悪いな。ウチ、エアコン壊れてるみたいで動かないんだわ」  日下部は開け放たれた引き戸から部屋に備え付けられている古いエアコンを見て言った。  その視線を辿りながら天谷は「この夏、扇風機だけじゃキツそうだな」と哀れそうに言う。 「まあ、何とかなるんじゃね。ほら、いつまでも台所にいないで中に入ろうぜ」 「ああ」  二人は部屋の中に入ると扇風機が当たる位置に座り込んだ。  坐るなり、日下部は麦茶を一気に喉に流し込む。  日下部が麦茶を飲むゴクゴクと言う音が部屋に響く。 「ぷはぁーっ! 生き返った!」  日下部がグラスを床に置く。  天谷は日下部を見ながらゆっくりと麦茶を飲んでいた。 「天谷、そんなにゆっくり飲んでたら麦茶が温くなんぞ。男なら一気にいけよ」 「何だよそれ。日下部、何か、ここに来てからテンション高くね?」 「ああっ? そうか? 別に、そんな事無いと思うけど?」  日下部はそう言ったが、日下部は、カフェの前で天谷が言った言葉が嬉しくて、明るい気持ちになっていた。 『あの、日下部。俺、日下部と一緒にいるだけで楽しいから。だから、特別な何かとかいらないから。だから、だから、俺のしたいことは、日下部と一緒にいる事、だから』 (可愛い事言ってくれちゃって)  日下部はニヤリと笑う。

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