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第101話 たまには恋人らしく8p

「痛っ! 何すんだよ!」  日下部の手を払いのけると天谷は再び不機嫌な顔をする。 「さっきのお返し」  ニヤリと笑い、日下部が言う。 「ばか! もうお前のことなんか知るか!」 「そう怒るなよ。怒ってばっかいたらせっかくの膝枕が台無しだろ」 「お前がふざけてばかりいるからだろ!」 「はいはい、悪かったよ」  笑顔を浮かべてそう言う日下部に、天谷はため息一つして見せると、「で、日下部の方はどうなわけ? 俺に膝枕されてみて」と訊いた。  訊かれて、日下部は、「うーん……」と腕を組んで考えてみる。  そんな日下部を天谷は緊張の面持ちで見つめていた。 「五十点だな」  さんざん考えたあげくに出た日下部の答えに天谷は顔を歪める。 「五十点って何だよ」 「いや、だってお前、考えてみたら、お前に初めて膝枕してもらったっていう新鮮さはあるけどさ、お前、緊張してて、めちゃくちゃ膝に力入ってて膝、硬たいし、それにさ、ただ膝の上に頭乗っけてるだけって何なのって」  そう聞いて、天谷は不満そうな顔をする。 「じゃあ、どうすればよかったんだよ。膝枕って、言葉通りにただ膝の上に頭乗っけてるだけじゃダメなわけ?」 「ダメってわけじゃ無いけど、色々あんだろ」 「色々って何?」 「何ってお前……」  恋人同士ならもっと他に何かあるだろ、と言いかけて、日下部は止める。  現在、自分達が恋人と友達との曖昧な関係にあることを日下部は思い出した。  そして、そうなっている原因の一つは日下部にもあるのだ。  天谷を愛おしく思っているはずなのに、好きだと言ってやれない。  言わなければいけないことなのに、どうしてか言えないのだ。  タイミングの問題なのか、日下部の意気地の無さなのか、それ以外の何かなのか。  絶対に言わなきゃいけない言葉のはずなのに……。 「あーもう、面倒くせー! 天谷、ほら、膝枕、交代するから。実践して見せてやる!」 「えっ?」 「えっ、じゃねーよ。膝枕、今度は俺の番な」  日下部は天谷の膝から頭を上げると、そのまま正座をした。  天谷は日下部を見たまま瞼を瞬かせている。 「ほら、早く」  日下部が自分の膝を叩いて言う。  天谷は狼狽えていた。

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