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第118話 テノヒラノユキヲ見ㇽ日3p

 天谷は恋人達に囲まれて居心地悪そうにしていたが、日下部はそんなことを気にしている様子は無く、くつろいでいる。 「えっと、日下部、何の用事?」  日下部を横目に見て、居心地の悪さから気を紛らわせるように天谷は訊く。  日下部は天谷の問いには答えずに、流れる人の波を眠たそうな目で見ながら、「うーん」と声を上げる。  仕方が無いので天谷も日下部と同じ方を向き、日下部と同じようにして、通り過ぎる人達の姿を眺める。 「色んな奴がいるよな」  日下部が、ポツリとそう言う。 「それは、そうだ」 天谷もポツリと言った。 「お前さ、今日がクリスマスだって知ってたか?」  日下部は中身が空の紙コップを手でつぶしながら天谷に訊いた。  天谷は首を振る。  天谷のリアクションに日下部は何故か深く頷いた。  そう、今日はクリスマスだった。  だから、巨大なクリスマスツリーのあるカササギデパートの中央広場には、クリスマスのデートを楽しむカップルたちで溢れていたのだ。  カササギデパートのクリスマスツリーはテレビのデートスポット特集で放送されていた。  カササギデパートの、この白い巨大なクリスマスツリーは、七色に輝く電飾と雪の結晶の形をした飾りと、金平糖のように小さな無数の星で飾られていて、実に可愛らしい。  そんなツリーの下で、天谷と日下部は、男二人で、ぼんやりと恋人達を眺めながら、ただ話をしているのだった。 (俺はここで、一体何をしているんだろう。俺達、完璧に場違いだろ)  心の中で、天谷は嘆く。  そんな天谷の心中を知ってか知らずか、日下部が口を開いた。 「俺はさ、昨日、学校で梨穂子に聞いて初めて知ったんだよ、今日がクリスマスだってこと」  梨穂子というのは今、日下部が付き合っている彼女のことだ。  梨穂子は、中々可愛らしい女の子で、彼女の方から日下部に告白して二人は付き合うこととなった。  二人が付き合い始めてからまだ二ヵ月ほど。  二人は、周りから見れば仲のいいカップルだった。 「昨日がクリスマスイヴだってことも梨穂子から聞いたんだよ。こういうの、初耳って言うんだっけ?」 「微妙なところだ」 「そうか、まぁ、いいや。それでさ、梨穂子が怒こっちまったわけよ。梨穂子は、俺がクリスマスに何か彼女とのデートのプランを考えていると思っていたんだ。だがしかし、だ、俺はクリスマスの存在を忘れていた」 「うん」 「それで、梨穂子はカンカンになって、で、それっきり。電話しても出ないんだよ。はぁ、やっちまった」  日下部は頭を抱えた。  クリスマスに彼女のご機嫌を損ねるだなんて、頭も抱えたくなるだろう。 「そういえば、昨日、日下部と彼女、学校で喧嘩していたのを見たけど、そんなことがあったんだ。知らなかった」 「まぁ、俺も、お前にいちいち言わなかったし」 「うん、それと俺を呼び出したことと何か関係があるわけ?」 「そりゃ、ある……いや、やっぱりないな」  日下部はゆらりと首を揺らした。

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