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第120話 テノヒラノユキヲ見ㇽ日5p

「お前、言うようになったな。知り合った当初は口下手で可愛いもんだったのに、一体どうしたらそこまでひねくれられるんだよ」 「そんなの、日下部と小宮が意地悪でウザったいからだろ。俺のせいみたいに言うなよ」  むくれる天谷に、日下部が、クスクス笑い、やれやれ、という視線を向ける。  日下部と小宮といると、天谷は良くむくれる。  そんな天谷を日下部も小宮も良くからかい、そして、それで天谷はさらにむくれる。 「そういや、お前、図書館にいたんだよな。お前って、本当に本、好きな」  むくれたままの天谷に日下部が新たな話題を振ると、天谷は、少し不機嫌な顔のままに口を開いた。 「うん、まぁ。……なぁ、日下部、本当は何の理由で俺を呼び出したわけ?」 「うん? いや……だから、会いたかったからだって」 「俺と会うよりも、彼女と会えばいいじゃん。どうして俺なのさ」 「梨穂子とは連絡が取れないんだって。つうか、お前、ずっと鼻の頭に金色の紙吹雪がついてるぞ。どこで付けて来たんだよ」 「え、本当に?」  こんな風に、天谷と日下部は、クリスマスツリーの下で、恋人たちに囲まれて、なんてことの無い会話をして過ごした。   「そうだ、天谷、買い物付き合ってよ」  日下部が思い出したかのように言う。 「別に良いけど、何買うの?」 「うーん……彼女のプレゼント。怒らせちまったし、悪かったからさ、せめてもの罪滅ぼしだよ」 「なるほど」  天谷と日下部は立ち上がり、恋人達の波をかき分けてエスカレーターでデパートの三階へと向かった。  三階には、雑貨用品を中心とした売り場が数店舗ある。  日下部は色々な店に入りプレゼントを吟味した。  今二人がいるのは、冬らしい、毛糸で編んだ商品が並ぶ店だった。  マフラーにセータ、手袋に鞄、アクセサリー、店に並ぶ商品が何でも毛糸で出来ている。 「なぁ、天谷、これなんかどう思う?」  日下部が、赤い手袋を天谷に見せる。  片方だけ、手首の辺りに小さな青い星のマークの付いた手袋だった。 「えーっと、どうだろうな。わかんない。俺に訊かれても……俺が日下部の彼女の気に入りそうな物なんてわかるはずもないし」  日下部は、プレゼントを選ぶ時、いちいち、天谷にこれはどうかと訊いていた。  訊かれる度に、天谷は難しい顔をして悩み、結局はわからないと日下部に告げた。 「この手袋、彼女より、どっちかっていうとお前に似合いそうだな」  日下部が天谷の手をジッと見てそう言う。 「え、赤い手袋が?」  うさん臭そうに天谷は日下部を見る。 「うん、あっ、コレ、メンズサイズもあるじゃん」  日下部はメンズサイズの手袋を手に取ると、天谷の手に重ねる。 「はら、良く似合う」  それは確かに天谷に良く似合っていた。 「俺に似合ったところで彼女のプレゼントにはならないだろ」  天谷の指摘に、日下部は、そりゃそうだな、と苦笑いする。 「つか、お前の手、冷めてーね。氷で出来てんじゃねーの?」  天谷の手を日下部は手袋ごと握り締める。  そうして、天谷の手を握りしめたまま、冷たい、冷たいと言いながら、腕をブンブンと揺らす。

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