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第127話 テノヒラノユキヲ見ㇽ日12p
餃子も食べ終わり、二人は水を喉に流し込んで席を立つ。
天谷は会計の為にリュックから財布を取り出した。
「あ、天谷は払わなくて良いから」
「え?」
「俺、ここのポイント貯めててさ。そのポイントが貯まったんだよ。ポイントが貯まるとラーメン一杯無料なの。だから、お前の分はそのポイント使って奢ってやるよ」
日下部は、金色のポイントカードを片手でひらひらとさせながら得意気でいる。
「でも、悪いよ。日下部が使えばいいじゃん。俺はちゃんと自分で払うから」
「いいんだって、元からそのつもりで、ここ誘ったし」
「でも、餃子も食べたし」
「それは、俺が勝手に頼んだやつだから。とにかく、奢らせろよ。今日、無理矢理付き合わせちまってるから、そのお詫びだよ」
「無理矢理だなんて、そんなこと」
そんなこと無いのに、と言おうとして、天谷は何故だか口ごもってしまう。
「じゃあ、会計するから」
そう言うと、日下部はレジカウンターへ一人で向かって行ってしまった。
慌てて天谷は日下部の後を追う。
レジでは日下部がすでに会計を済ませていた。
二人で店を出ると直ぐに、天谷が、「ご馳走様でした」と日下部に向かってお辞儀をする。
日下部が、「うん」と言って、お辞儀をしたままの天谷の頭にポンッと手を載せて頭を少し撫でた。
天谷はそのまま下を向いてジッとしていた。
「何だよ、止めろって言わないの?」
「奢ってもらったし」
また、こんな所で、と思うけれど、奢ってもらった手前、日下部を邪険には出来ない天谷だった。
「そうかそうか、じゃあ、遠慮なく」
そう言って、日下部は天谷の頭をグイグイと撫でる。
天谷の髪はグチャグチャになった。
それでも日下部は止めない。
日下部も、共通の友人である小宮も、よくこうして天谷の頭を撫でて弄る。
天谷はそれが初めのうちはただ恥ずかしかっただけだった。
それが、徐々に鬱陶しくなり、くすぐったい気持になり、そして、今は何だかわからない。
「ちょっと、もう止めろよ」
天谷が言うと、日下部は素直に天谷の頭から手を離した。
「奢ってやったのに」
「恩着せがましい奴は嫌われるぞ」
「それは困る」
「勝手に困ってれば?」
「何だよ、ひでーな」
「どっちが」
店の入り口で、ああだこうだと言っていると二人連れの女の客が店から出て来た。
それで、二人は黙ってしまった。
女性客二人はやって来たエレベータに乗り込むと、去り際に、「あの二人、仲いいねぇ」と言って笑った。
エレベータのドアが完全に閉まると、日下部が笑いだす。
「ちょ、俺たち仲良しだってさ」
日下部は可笑しそうにしているが、天谷は恥ずかしさで震えている。
(穴があったら入りたい)
顔を手で覆いながら天谷は思った。
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