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第146話 蜜の指先5p
日下部は、ゆっくりと舌の先で蜂蜜を少しずつ舐める。
「やっ、なっ……何してっ」
手を引こうとする天谷のその手を強く握り、日下部は「蜂蜜、もったいないから。代わりに俺が舐めてやる。じっとしてろよ」と囁いた。
「でっ、でも、こんな、やだっ」
首を振って嫌がる天谷に、「お前のせいだろ。男らしく責任取れよ」と日下部は睨みを利かせる。
「男らしく……わ、わかった」
観念した、というように天谷は肩を落とした。
「はぁっ……くさかべっ」
恥ずかしいのか、天谷は目を細くして自分の指を舐める日下部を見ながら日下部の名前を呼んだ。
日下部は天谷の指先を唇で挟むと、「んっ?」と天谷の方を向く。
日下部と目が合うと天谷は、はっと息を吐き出す。
「は……ずかしいから、早く終わらせろ」
そう言って、天谷は口を結ぶ。
「お前が大人しくしてたらすぐ終わる」
日下部の台詞に天谷は小さく頷く。
甘い、天谷の指先。
蜂蜜で琥珀色に濡れた指先。
日下部はそれを唇で優しく挟んで、少し、吸う。
天谷が身じろぐ。
今度はもっと深く、口の中に指先を含んでみる。
「んっ」
天谷が肩を震わせる。
日下部の口の中に、甘い蜜が溶け込む。
日下部は蜜の味をゆっくりと味わった。
天谷には、早く、と言われたのに。
口の中の指を、舌で転がすように舐めてみる。
天谷の甘い吐息が漏れるのが聞こえる。
日下部が指を口に含んだまま、天谷の顔を見てみれば、天谷は、赤く染まった顔で、目を潤ませながら、小さく呼吸を繰り返していた。
日下部の胸がドキリと鳴る。
(こ、こいつ、何? 指だけでこんな? 半分冗談のつもりでやってたのに……っつ。マジか)
日下部の心に生まれた躊躇い。
しかし、艶っぽい目で自分を見つめる天谷を見ていたら、日下部の理性は飛んでいた。
日下部は、視線を天谷の指先に戻して、夢中で天谷の指先の蜂蜜を舌と唇で舐め取った。
「日下部?」
不安げな天谷の声を日下部は無視する。
「ちょ、くっ、くさかべっ!」
日下部はやっと天谷の方を向くと、自分の人差し指を口に付けて「静かにしないと小宮に気付かれるぜ」と言う。
それを聞いた天谷は、「くっ」と声を上げると口を噤んだ。
指先の蜂蜜はあっという間に綺麗に舐め取られた。
でも、まだ指全体の蜂蜜は残っている。
日下部はうっとりとして天谷の手を見る。
天谷の手は白くて、指は細く整い、綺麗だった。
そして、手だけでは無くて、今、耳まで赤くして、恥ずかしさを耐えるように唇を結んで、日下部を濡れた目で見つめている天谷は、ゾクリとするほどに綺麗だった。
(くそっ、抱きてー)
指だけじゃ足りない。
もどかしい思いで、日下部は天谷の蜜の指を甘く噛んだ。
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