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第149話 蜜の指先8p

「もう直ぐだから、心配すんな」 「もう直ぐって、んんっ」  日下部が、舌と唇で指をついばむ。  それと同時に手を解される。  こそばゆさと気持ちよさが、まぜこぜになって、天谷はくらりとした。 「く、さかべっ、も、だめっ」  気が遠くなりかけて、天谷は日下部にそう言う。 「これで終わりだから」  そう言って、日下部は天谷の指を口に含んで飴玉のように舐め始めた。  もう、指にはほとんど蜂蜜は付いていないというのに、ゆっくりと。 「いやっ、やっ」  天谷はきつく目を閉じ、感じている感覚を必死に誤魔化そうとする。  早く。  早く終わって。  早く。  早く。  口に含んでいた指が解き放たれた。  と、指先にキスをされる。  唇の触れた感触に天谷はドキリとする。  そこが、妙に熱い。  日下部の唇が指から離れる。 「はい終わり。綺麗になりました」  日下部の台詞を聞いて、天谷は、はぁっと、大きく深い息を吐き出して、そして、ガクリと膝を折った。  崩れそうになる天谷の体を日下部が受け止める。  日下部の肩にもたれかかりながら、天谷は深い息を繰り返す。  くらくらする、と天谷は思う。 「大丈夫かよ」  焦った顔で日下部が訊く。 「んっ、つ、疲れたぁ……」  天谷を縛っていた緊張感が一気に抜ける。 「お前ってば、敏感なのな。調子に乗って悪かったよ」  日下部が天谷の背中をさすりながら言う。  その感覚に、天谷はまた、ゾクリとする。 「び、敏感って何?」  感じている感覚に目を背けて言葉を紡ぐ。 「お前、わかってねーの?」  日下部は、天谷の背中をさする手を止めて言う。  天谷はホッとする。 「頭真っ白で何もわからんわ」 「頭真っ白になるくらい良かった?」  意地悪な笑みを浮かべて日下部は言う。 「知らねーよ!」  そう言って、天谷は口を尖らせた。 「も、いいから、離して」  天谷が日下部の体を両手で押す。  これ以上日下部にくっ付いていたらどうにかなりそうだった。 「大丈夫なのかよ?」  心配そうに日下部が言う。 「大丈夫も何も、小宮がいるんだぞ」 「ああ、小宮? 忘れてた」 「ひでー」  二人で小宮の様子をそっと見てみる。  小宮はアダルト雑誌をまだ読んでいた。 「凄い集中力だな」  日下部が、感心しているような、呆れているような、そんな感じで言う。 「お前もな」  天谷は呆れて日下部を見る。

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