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第150話 蜜の指先9p
くらくらした感覚を少し残したままに、天谷は手を洗う。
日下部に舐められた指をしげしげと見て、されたことを思い出しそうになって、天谷は慌てて石鹸の泡で指を擦った。
「そんなに一生懸命洗うことねーじゃんか」
不満そうに日下部が言う。
「うるさい! お前の唾液まみれの指なんか、このままに出来るか!」
天谷は鋭い目つきで日下部を睨む。
「ひでー」
天谷が丹念な手洗いを終えると、二人はレモネード作りを手早く再開した。
部屋にいる小宮は、もうアダルト雑誌を閉じていた。
「小宮、お待たせ」
そう言って、日下部は、グラスを乗せた盆を持ち、部屋に入る。
日下部の後を、炭酸水とミネラルウォーターのペットボトルを持った天谷が続く。
「おっ、二人とも、待たされたっ。何か随分と時間かかってたね」
小宮がベッドから立ち上がり、ソファーに座りながら言う。
小宮の台詞に天谷はギクリとした顔をする。
日下部はすました顔だ。
「悪い、ちょっと手間取った」
天谷とのことを思い出しながらそう言うと、日下部は、ソファーの前にあるテーブルに盆を置き、テーブルの前に胡坐をかいて座った。
天谷はミネラルウォーターを盆の隣に置いて、小宮の横に座る。
「天谷、何か疲れてね?」
天谷の顔を覗き込んで言う小宮。
「つ、疲れてなんかいないから。つか、小宮はスッキリとした顔しているよね」
天谷はベッドの上のアダルト雑誌にチラリと視線を向けた。
「まね、エロ本読破してしまいましたからね。そりゃ、スッキリもしますわ。つうか、日下部さん、あんた、いい趣味してますな!」
小宮は日下部に細い目を向ける。
「ほっとけ小宮! それより、ほら、レモネード! 二人とも、炭酸水かミネラルウォーターかどっちか選んで」
日下部の台詞に、二人は炭酸水とミネラルウォーターのペットボトルに目を移す。
「俺、炭酸」
炭酸水を指さして小宮。
「俺はミネラルウォーターで」と天谷。
「じゃあ、俺もミネラルウォーターにする」と日下部。
それぞれ決まったところで、日下部が、氷の入ったグラスそれぞれに、炭酸水と、ミネラルウォーターとを注いでゆく。
そして、日下部はそれをマドラーでかき混ぜた。
いちょう切りに切ったレモンがグラスの中をクルクルと舞う。
いちょう切りのレモンは日下部が切ったものだった。
「はい、出来上がり。ストローがお盆にあっから、それで飲んで」
薄い黄色に、いちょう切りに切ったレモンの舞うレモネード。
レモンの爽やかな香りが香る。
天谷と小宮は盆からストローを取り、グラスに挿して「頂きます」と声を合わせ、レモネードをストローでゆっくりと吸い、一口のみ込んだ。
「どう?」
ちょっぴり緊張した面持ちで日下部が訊く。
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