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第167話 恋人アプリやってみました6p

 天谷はメールを開いた。  メールにはこのようにあった。 『恋人アプリをご利用頂き誠にありがとうございます。  ご質問頂いた内容についてですが、簡単に、イニシアチブを取る側と取られる側、とお考え頂ければよろしいかと思います。  タチがイニシアチブを取る側、ネコが取られる側となります。  そうでない場合も御座いますが……。  タチかネコか、この質問を入れるかに関し、当恋人アプリ開発室では賛否両論御座いました。デリケートな話ですので、如何なものかと。しかし、恋人アプリでは、ユーザー様と恋人様との仲の完全バックアップを目指しております。検討の末、開発室では恋人との関係を考える上では重要な質問、という結果に至りました。今回、質問内容について、戸惑わせてしまい申し訳御座いません。@あま様と恋人様は同性同士のカップル様と理解しております。ご質問内容から察すると、@あま様は同性とお付き合いするのは現在の恋人様が初めてなのかも、と思いました。失礼な発言でしたらお許し下さい。@あま様、初めての恋愛に何かと戸惑いや不安がおありかと存じますが、恋人アプリでサポートさせて頂ければ幸です。  @あま様の恋愛をわたくしも陰ながら応援致します。  また何か御座いましたらまた当カスタマーセンターへご連絡下さいませ。  恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式』  @あま、天谷のユーザーネームである。  天谷は長いメールを読み終える。 (めちゃくちゃ熱のこもったメールだったな。担当、あかしきさん? 開発室の苦労、垣間見せられた。でも、日下部と付き合ってること、秘密で誰にも言えないから応援とかされるの、何か嬉しいかも。うん、頑張ろう! 赤式さん感謝! えっと、タチがイニシアチブを取る方で、ネコがイニシアチブを取られる方か。勉強になったな。うーん、どうなんだろ。どっちかっていうと、日下部に流されて色々やってるよな、俺。て、ことは、日下部がイニシアチブを取ってるってこと? な、何か悔しい。でも、俺が率先して何かやるとか無いし。うん、日下部がタチで俺がネコだな)  天谷はラブラブ度診断の最後の質問に答え、診断結果を待つ。  結果が現れた。  大きなハートマークの中がメモリの付いたグラフのようになっていて、下からピンクの液体が溢れてゆく。  液体が止まり、天谷と日下部のラブラブ度は七十二パーセントだと告げる。 『まだまだこれから! 二人の仲、上げちゃお!』という文書が踊る。  天谷は目を見開いて画面を見た。 (七十二パーセント? どうなのこれって。五十パーセント以下なら流石にへこんだけど、七十二パーセントって微妙。試験で言ったら七十二点じゃん。惜しくもなく残念でも無く、微妙。でも、その微妙な関係なんだよな、俺達って……当てはまると言えば当てはまる七十二パーセント。まだまだこれからか……俺たちの関係がこれ以上に上がることなんか有り得るのか?)  天谷の顔に、暗い影が降りる。  しかし、天谷は頭を振って、(だめだ! ネガティブ禁止! 取り敢えず、アプリを進めてみよう)と次へ、のアイコンを押した。

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