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第169話 恋人アプリやってみました8p
『カロリーメイツと牛乳で昼飯中』
送信。
数秒後、日下部から返信のメールが届く。
『お前、ばかか? ちゃんとした物食えよっつったろ! お菓子じゃないやつって! クッキーと牛乳っておやつじゃねーか! あほ!』と、日下部からのメールの文書は辛辣だった。
天谷は眉間に皺を寄せて返信のメールを打つ。
『何だよ! カロリーメイツをばかにするのか? ばか! カロリーメイツは栄養バランス最高だっての! 牛乳だってカルシュウム取ってるじゃん! 何が悪いんだっての! ばか! ばか! 日下部のばか!』
送信。
天谷はカロリーメイツをむしゃむしゃ食べると、牛乳の紙の蓋をピンと弾いて蓋を開けて、牛乳をグビリと飲んだ。
「くはっ」
思わず声が出る。
天谷は鼻の下に付いた牛乳の跡を手でサッと拭う。
(日下部のやつ、何だよ、人のことあほとかって。昼飯一つで、何でそこまで罵られなきゃならないわけ? やってらんねーよ!)
頬を膨らませて怒り心頭の天谷だが、自分が普段日下部を、ばか、あほと罵っていることは忘れている。
日下部から返信のメールが来る。
『何だよ、お前、可愛くねーな! こっちは心配して言ってんだろ! そんなもんばっか食ってて倒れたりしたらどうすんだばか! ちょっとは考えろよ! ばか!』
日下部のメールの内容を見て、天谷は、「はぁ?」と声を上げる。
(日下部、また、ばかっつた! 何だよ、こいつ! こっち、心配してくれなんて言ってないし! ムカつく!)
天谷は夢中で返信のメールを打つ。
『ばかはお前だ、ばか! 心配とかって恩着せがましいんだよ! ば』
天谷のメールを打つ手が止まる。
(ちょっと待て、俺! 思い出すんだ! ラブラブ度診断のアドバイスを!)
『勇気を出して、アナタの方からアクションしてみましょう。彼の気持ちに出来るだけ応えてあげて。彼にたまには優しく接してみて』
(日下部の気持ちに出来るだけ応える。日下部に優しく……ううっ、日下部の気持ちに応える、か。そういえば日下部、俺と旅行に行くためにバイトしてるんだもんな。飯のことうるさいのも俺のため。その気持ちに応えなきゃ、だよな。優しく……そもそも優しさって何だっけ? 何かの薬の半分の成分? ああっ、わからん。でも、取り敢えず、このメールを送らないことが優しさの一つだよな)
さっき書いたメールの文書を削除し、天谷は再び文書を考えた。
そして、どうにかメールを書き上げる。
『可愛く無くてごめんなさい。心配してくれてありがとう。日下部、バイト無理しないでね』
送信。
天谷はドキドキしながら日下部の返信のメールを待つ。
日下部から返信が来た。
天谷は素早くメールを開く。
『何だよ、何か他人行儀だな。まぁ、わかってくれたならいいよ。バイトのこと、心配してくれてサンキューな。ほどほどに頑張るわ』
日下部のメールはそんなことが書かれていた。
(これって大丈夫? 他人行儀とか書かれてるけど。でも、サンキューってなってるし、まぁ大丈夫だよな)
天谷は、ふぅっと一呼吸ついた。
日下部とのメールのやり取りはしばらく続いた。
二人はたわいのない会話をメールでする。
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