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第171話 恋人アプリやってみました10p
夏休みの日下部との旅行。
天谷は旅行なんて、高校の修学旅行以来一度も行っていなかった。
旅行に行くだけでも天谷は緊張しているのに、今回は日下部と二人きりでの旅行だ。
日下部とは付き合っているものの、二人でデートすらしたこともなく、それがいきなり旅行へ、となると、天谷は不安でいっぱいだった。
その不安な気持ちを、秘密にしている関係上、誰にも打ち明けられない。
もちろん、日下部にも。
日下部との関係も、曖昧なまま。
最近は、ちょっぴり日下部が積極的になって来ていたが、そんな日下部に天谷はどう接したら良いのかわからない。
そんなこんなで、天谷は藁にも縋る思いでコンテンツを見る。
コンテンツの数は数十種類。
天谷はどのコンテンツを使おうか迷う。
(そういや、電車で女子高生達がシュミレートがどうとかって。えっと、あっ、これ? シュミレーションモード?)
天谷はシュミレーションモードを選択する。
すると、シュミレーションモードの説明が始まる。
『シュミレーションモードへようこそ! シュミレーションモードでは、様々なシーンでのアタナと恋人とのアクションをシュミレート出来ます。アクションとは、その名の通り、行動という意味。アナタのアクションで恋人がどんなアクションを取るかシュミレーションモードでシュミレートしてみましょう! また、シュミレート後、恋人の恋愛ボルテージが表示されます。恋愛ボルテージとは、アナタのアクションで恋人の気持ちがどれだけ上がったかの数値。シュミレートを参考に、アナタの恋、上げちゃお!』
(要はシュミレーションゲームってことか。シュミレーションゲームなんてやったこと無い。ゲーム事体やったこと無い。日下部と小宮がゲームやってるのを見てるだけだもんな、俺。そういや、いつだったか、小宮が恋愛シュミレーションゲーム? やってるの見たことあったよな。ドギマギメモリアル……だっけ? あんなようなもの?)
ドギマギメモリアルは、かつて一世を風靡した恋愛シュミレーションゲームである。
このシュミレーションゲームを発端に、落とす、という言葉が若者の間に広がった。
天谷は取り敢えずシュミレーションモードをやってみることにする。
シュミレーションモードでは、シーンを選択する所から始まる。
買い物に食事、デートにクリスマスなどのイベントなど、様々なシーンが用意されている。
(あっ、あった! 旅行!)
旅行を見つけて、それを選択する天谷。
選択が終わると、画面が変わり、今度は設定画面となる。
旅行の詳しい内容を登録する画面だ。
(設定とかって、面倒くさ! えっと、旅先……海、山、都市……っと、この中から選択っと。季節は、夏。後、泊まるとこっと、ホテル、旅館……旅館で選択。次は……彼とは初めての旅行? はいっと。次っ!)
天谷は、さくさく登録を済ませてゆく。
登録が終わると、いよいよシュミレーションが始まる。
天谷は固唾を飲んで画面を見守る。
タイトルが現れる。
『ドキドキ、彼との初旅行!』
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