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第172話 恋人アプリやってみました11p

「ぶはっ!」  ここが図書館だということも忘れ、天谷は吹き出した。 (めちゃくちゃ恥ずかしいタイトル付けられた。ジーザス!)  恥ずかしさで神に祈る天谷を置いて、シュミレーションモードは進む。  画面に広がるのは美しいグラフィックで描かれた夏の山間の風景。  天谷はグラフィックの美しさに思わず息を呑む。  場面は変わり、旅館を目指して道を歩く二人の恋人達へ。  恋人二人は、もちろん男同士。  二人の男のイラストは可愛らしい感じに描かれている。   (このグラフィックで無料。ちゃんと男同士になってるし。恋人アプリって何なの?)  画面上で、二人の会話が始まる。  ちなみに、はい、いいえ、で会話を選択するシステムだ。  二人は、旅行のこれからについて話している。  一泊二日の旅行。  どこへ行くかや何を食べるか。  天谷の恋人という設定の男の、当たり障りのない会話の中に、今回の旅行に対しての期待が現れている。  天谷はドキドキしながら恋人の話に、はい、いいえ、を選択しながら答えていった。 「温泉、今から楽しみだな」  画面の中、恋人は笑顔でそう言う。 「うん」  ゲーム中の天谷はそう言う。 「温泉、一緒に入ろうな」  恋人のこの台詞で選択肢。 『アナタは恋人に何て言う?』  一つ目はこうだ。  恥ずかしがりながら、うん……一緒に入ろうと言う。  天谷はそのシーンを想像して顔を赤くする。 (無理! 何か恥ずかしい! 日下部にこんなこと言えない! いいえ!)  天谷は、いいえ、を選択。  二つ目の選択肢。  恥ずかしがるアナタ。  恥ずかしくて……とはぐらかす。  天谷は、うーん、と唸る。 (何か微妙だな。でも、まぁ、こんな感じか? はい?)  天谷は、はい、を選択。  その選択による恋人の反応は…………。 「何だよ、恥ずかしがったりして。仕方ねーなぁ」と言ってニヤける彼。  恋愛ボルテージが十溜まる。  ちなみに恋愛ボルテージはハートマークのグラフで現れる。  恋人アプリ開発室はハートマークが好きらしい。 (あっ、選択、合ってた? ニヤけてるし、まんざらでもなさそうな反応。恋愛ボルテージも十。良かった。でも、前の選択してたらどれくらい恋愛ボルテージ溜まったんだろう? 前の選択もそうだけど、何か、恥ずかしそうにっていうのがポイントなのかね?)

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