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第173話 恋人アプリやってみました12p
旅行のシュミレーションは続く。
恋愛に不器用な天谷のお陰で、二人は中々いちゃつけない。
いちゃいちゃするタイミングが来ると、どうしても天谷は恥ずかしくて、前へ進めないのだ。
しかし、恥ずかしがる天谷の態度に恋人がたぎっているのは確かだった。
恋愛ボルテージは地味に上がってゆく。
場面は旅館の温泉にて。
温泉はたまたま二人きり。
岩作りの温泉は、お湯は透明で、腰痛、リュウマチに効くという。
「温泉を二人で、何て贅沢だな」と彼。
肩まで湯に浸かりながら、「そうだね」とアナタ。
「もっと、こっち来いよ」と彼がアナタを引き寄せる。
「あっ」とアナタは声を上げる。
この温泉シーンのイラストは、やけにムード良く描かれていた。
湯気に見え隠れする男二人の肌が何とも言えずにエロティックであった。
画面を見守る天谷は赤面する。
ここで選択肢が現れる。
『恋人に引き寄せられたアナタ。どうする?』
天谷は慌てふためく。
(どうするも何も、ええーっ!)
天谷の戸惑う気持ちは無視して選択肢が現れる。
一つ目の選択肢。
アナタは無言で彼の胸の中へ。
天谷は日下部とのそんなシーンを想像しそうになって、慌てて掻き消した。
(いやっ、な、何っ? 温泉で何やってるの? これ、だめなやつじゃん! 誰か来たらどうすんの? だめ! だめっ! いいえ!)
天谷は、いいえ、を選択。
二つ目の選択肢。
恥ずかしいよ、と彼の手を振り解き、彼から距離を取る。
(う、うん、これだろ。恥ずかしいだろ。日下部には悪いが、俺には温泉でくっ付くとか無理だ。すみません。はい)
天谷は、はい、を選択。
その選択による恋人の反応は…………。
少し気まずそうな顔で、「ははっ、だよな。俺も冗談だよ」と言って彼は笑った。
恋愛ボルテージは上がらず。
(ああ、くそっ、失敗した。二つ目以降の選択肢も見るべきだった。でも、温泉でくっ付くとか、絶対に無理だし。ああっ、どうすればいいんだ。もう、温泉何か入らない方が良いのかも知れない。そもそも、俺、温泉あんまり得意じゃ無いんだよな。今更だけど)
ため息を吐き出し、天谷はシュミレーションモードを続ける。
その後、恋人から天谷へのアプローチは続いたが、そのアプローチに天谷は上手く応えることが出来ず、二人の仲は不穏な空気が満ちてゆく。
そして、場面は夜、就寝のシーンへと移る。
画面には間接照明のオレンジ色の明かりの中で、畳の上に二つ並んだ布団の絵。
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