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第174話 恋人アプリやってみました13p

 天谷は眉間に皺を寄せた。 (ちょ、まだイベントあるわけ? 大人しく寝ろよ! 明日があるんだからさぁー)  愚痴る天谷を置いて、イベントシーンは始まる。    二つ並んだ布団をぼんやりと見つめるアナタ。  と、彼がアナタの肩を抱き「一緒の布団で寝ないか?」と誘って来る。  ここで選択肢。 『アナタは彼と一緒に寝る? 寝ない?』 (ひぃ!)  天谷は心の中で悲鳴を上げた。 (ななななっ、何? 一緒に寝るとか寝ないとかって。ど、どど。どういう質問? えっ? ええっ?)  天谷はスマートフォンの画面に顔を寄せた。  選択肢が現れる。  一つ目の選択肢。 「うん」と一言いって頷く。  選択肢を見ながら天谷は狼狽える。 (うわっ、どうしよう。他の選択肢も気になるけど、選択は一回きりなんだよな。日下部と一緒に寝るか、寝ないか……うっ、一度、日下部と一緒に寝たことあったもんな。あの時は恥ずかしい思いでいっぱいだったけど。うーん……よ、よし、ここは一緒に寝てみるか! はい!)  勇気を出して、天谷は、はい、を選択。  その選択による恋人の反応は…………。  アナタは、少し気恥ずかしい気持で、「うん」と言って頷く。  彼は、ホッとした様子で布団を捲り「来いよ」とアナタを布団の中へと誘う。  恋愛ボルテージが十上がる。  画面の絵は、一つの布団に二人で横になる二人の絵に。 (な、何か、見てられない。非常に恥ずかしい)  天谷はスマートフォンを額に付けて、ううっ、と声を漏らす。  イベントのシーンは容赦なく続く。 (はぁ? まだあるのかよ! いい加減に寝ろよ!)  天谷が毒づこうが、恋人二人の夜は始まったばかりなのである。  しばらく無言で横になるアナタ。  アナタの心臓はドキドキ。  ふと、布団の中で、彼がアナタの手を握って来る。  ここで選択肢。 『アナタは彼の手を握り返す? 返さない?』  一つ目の選択肢。  躊躇いながらも、アナタは彼の手を握り返す。  天谷は瞬きを繰り返して画面を見る。 (えっ、手? 手くらいなら、良い……かな。でも、やっぱり恥ずかしいし。どうしよう。普段、日下部と手なんて繋いだりとかしないし。そんな関係でも……無いんだよな)  日下部と気軽に手も繋げない関係であることを思い出す天谷。 (うん、ここは、手を繋いどこう! 前向きに行こう! 前向きに! はい、を選択!)  天谷は、はい、を選択する。

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