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第177話 恋人アプリやってみました16p

 三つ目の選択肢にして、もはや天谷のヒットポイントはゼロに近い。  積極的に自ら浴衣を脱ぎ捨て……日下部とのそんなシーンを考えてしまい、天谷の想像力は限界を超え、悲鳴を上げていた。 (だめ! だめ! だめ! 絶対にだめ! 嫌っ! 嫌だっ! 本当に無理っ! いいえっ!)  天谷は、いいえ、を選択。  四つ目の選択肢。 「やめて……」と、アナタの胸元を漁る彼の手に自分の手を重ね、か弱げに彼に懇願する。  やっと否定形の選択肢が出て来て、天谷は少し落ち着く。 (ふぅ。えっと、どうしよう。これでいいのかな? でも、これだと、何かパンチが弱い気がする。もっとこう、しっかり断る感じの方が良くないか? 思わせぶりな態度を取るのも日下部に失礼な気がするし。うん、いいえ)  天谷は、いいえ、を選択。    その後の選択も、天谷のお気に召す物は現れず、天谷は、いいえ、を選択し続けた。  天谷が選択肢の多さにびっくりするのと同時に、そろそろ選択肢も尽きるのではないかと心配し始めたころ。  選択肢は十四つ目になっていた。  十四つ目の選択肢。  本気の彼に焦るアナタ。  アナタはその気の無いことを彼に告げると、全力で彼に抵抗する。 (あっ、これ……これで良くない? 何か、もう考えるの疲れて来たし。こっちにその気が無いってこと、ちゃんと言わなきゃだめな気がする。全力で抵抗して良いのかはわからないけど、抵抗はしなきゃだめだよな。何か、流されて日下部とそういうことになるの、嫌だし、友達みたいな関係続けてたのに、旅行でいきなり、とか、俺にはやっぱり無理だよ……はい)  天谷は、はい、を選択した。    その選択による恋人の反応は…………。  本気の彼に焦るアナタ。  アナタは彼の体を押しやる。  彼の唇があなたから離れると、アナタは、自分にその気がないことを彼に伝える。  けれど、彼は「思わせぶりな態度、取っておいてなんだよ!」と、諦めきれずにアナタを無理やり抱こうとする。  そんな彼に、アナタは全力で抵抗する。  そんなアナタに彼は言う。 「そんなに嫌かよ?」  ここで選択肢。 『アナタは彼に何て言う?』  一つ目の選択肢。 「こめん……」  生々しいイベントのストーリーに天谷はため息を漏らす。  投げ掛けられた一つ目の選択肢の言葉を天谷は噛みしめる。 (これ、だよな。この空気で、これ以外の台詞、有り得ないだろ。日下部、ごめん。はい)  天谷は震える指先で、はい、を選択。  その選択による恋人の反応は…………。

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