（うっ、正直、全然楽しくなかった。後半、ずっと地獄みたいだった。日下部だって、ずっとつまんなさそうにしてたし、こんな状態で楽しかったね、とか言えねーよ！　でも、せっかくの二人での旅行なんだし、嘘でも、楽しかったって言うべき？　今まで、正直でやって来てずっと失敗してるし） 　シュミレーションの中の彼を日下部と認識し出している天谷は答えに苦しむ。 　悩みに悩んだ末に、天谷が出した答え、それは…………。 　天谷は、いいえ、を選択。 （やっぱり、心にも思ってないこと言えないよ。それに、どう考えても、日下部の方も楽しかったって顔して無いだろ！　そんなやつに楽しかっね、何て言えるかよ！） 　天谷の視線は画面上のツンとした恋人の顔に注がれている。 　可愛らしいイラストの恋人の顔は、天谷の目には完璧に日下部に見えている。 　二つ目の選択肢が現れる。 　無言の彼に、やっぱり言葉が出ないアナタ。 　アナタは彼の横で、無言で新幹線の到着を待つ。 　天谷は、何の躊躇いも無く、はい、を選択した。 （もう、もう、いいよ。これで……） 　そっと目を伏せる天谷。 　その選択による恋人の反応は…………。 　アナタは彼に何も言えなかった。 　二人、無言で新幹線を待つ。 　彼もアナタも一言も話さずに。 　新幹線が到着した。 　二人は静かに新幹線に乗車する。 　これから二人はいつまで無言の時を過ごすのか…………。 　恋愛ボルテージは上がらず。 　画面は走り去る新幹線の絵に。 　そして…………。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　END 　シュミレーションは修了した。 　画面が切り替わり、旅行のシュミレーションの結果が現れる。 　シュミレーション結果発表！ 　恋愛ボルテージ合計42点 　彼の満足度24点 　この結果から見るアナタの旅行は、恋人同士としてはあんまり盛り上がらなかったご様子。もっと彼に気持ちを許して、アナタから積極的に旅を盛り上げてみましょう。 　例えば、アナタの方から、彼に話題を振る、とか。アナタからの何かしらのリアクションも大事。 　旅行は恋人同士に取って大事なイベント。 　気を抜き過ぎてもダメ。 　二人でいい思いで作りをしてね。 　天谷はガックリと肩を落とす。 （わかっていた結果とはいえ、ショック過ぎる。うっ、恋人同士としてはあんまり盛り上がらなかったって……確かに。でも、じゃあ、何？　彼に気を許してって、俺は、俺の意思に反して日下部の要求にアレコレ応えなきゃならないわけ？　そうでないと旅行って楽しめないの？　そんなのって……俺には無理だ） 　天谷の気持ちは暗くなる。