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第180話 恋人アプリやってみました19p

 日下部との二人きりの旅行。  それは、デートもしたことの無い二人にとって、初めての恋人らしいイベントだった。  その旅行が不安であったから、シュミレーションモードをやってみた天谷だったが、結果、より不安に陥ってしまった。 (日下部との旅行、もしも、このシュミレーションみたいに気まずくなったら完璧に俺のせい……だよな。せっかく日下部が誘ってくれた旅行なのに、俺のせいで日下部が楽しめなかったら……俺の方でも旅を盛り上げることが必用なのはわかるけど、でも、このアドバイス通りに俺の方から話題を振るとか言われても、何話していいのかわからないし。上手くやるにはシュミレーションでやったことと逆のことをやればいいってこと何だろうけど、それも恥ずかしいし)  考えれば考えるほど、天谷の気持ちは深海に沈むように落ちていった。  天谷は席を立ち、売店へ向かい、缶の温かいコーヒーを買った。  そして、リフレッシュルームへ向かい、空いた席に座る。  そこで、買ったばかりのコーヒーを少し飲んだ。  ふぅっ、と一息つく天谷。 (こんな時、相談できる誰かがいたらな)  そう思った瞬間、天谷は恋人アプリ・カスタマーセンターからのメールを思い出した。  天谷はスマートフォンを手に持ち、画面を操作してメールの受信箱を開き、恋人アプリ・カスタマーセンターからのメールを開く。  そして、メールを読み直してみる。  メールの、ある個所を天谷はゆっくりと読んだ。 『@あま様と恋人様は同性同士のカップル様と理解しております。ご質問内容から察すると、@あま様は同性とお付き合いするのは現在の恋人様が初めてなのかも、と思いました。失礼な発言でしたらお許し下さい。@あま様、初めての恋愛に何かと戸惑いや不安がおありかと存じますが、恋人アプリでサポートさせて頂ければ幸です。  @あま様の恋愛をわたくしも陰ながら応援致します。  また何か御座いましたらまた当カスタマーセンターへご連絡下さいませ。  恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式』 (……何か御座いましたら当カスタマーセンタへご連絡下さいませ。恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式……戸惑いや不安がおありかと存じますが、恋人アプリでサポートさせて頂ければ幸いです……か。これ、アプリのことと関係あるかわからないけど、俺の抱えているこの悩みをカスタマーセンターに相談とかって無理な話?)  天谷はもう一度、メールを読む。  カスタマーセンター赤式からの、@あま様の恋愛をわたくしも陰ながら応援致します。という文書に、天谷の目は釘付けだった。 (赤式さん……もしも、この人が、また俺からの連絡を見てくれたら、何か答えてくれるかも知れない)  天谷は気が付けば恋人アプリの画面を開いていた。  お問い合わせのアイコンを押し、同意書に同意し、お問合せ内容を書き込んでゆく。  気持ちが高揚していて、何を書いて良いのか文書が纏まらない。  それでも天谷は書くのを止めない。  自分でも、何をやってるんだかと思うが、天谷の手は止まらなかった。  熱心にお問合せ内容を書くこと一時間。  天谷はやっと内容を書き上げる。

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