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第181話 恋人アプリやってみました20p
(書けた。果たしてこの内容で大丈夫だろうか? ふ、不安だ)
天谷は自分が書いた文書に目を通してみる。
『恋人アプリ・カスタマーセンター様へ。
先ほど、タチネコの件で問合せさせて頂きました、@あまと申します。先ほどはご丁寧な回答を頂きまして、誠に有難う御座いました。とっても参考になりました。
御担当頂きました赤式様には深くお礼申し上げます。
今回、再び問合せさせて頂いたのは、アプリのシュミレーションモードについてお伺いしたいことがあるからです。
シュミレーションモードで旅行を選択してシュミレーションをしたのですが、シュミレーションの結果は散々でして。恋愛ボルテージ合計42点、彼の満足度24点とのことで、恋人同士としてはあんまり盛り上がらなかったという結果になりました。
実は私、近々、恋人と旅行に行く予定が御座いまして。
同性の恋人になります。
私達二人には初めての旅行になります。
それで、旅行が不安になってシュミレーションをしてみたのですが、結果を見て、かなり落ち込みまして。
シュミレーション結果のアドバイスも拝見しましたし、シュミレーション時に自分がしたことと違うリアクションをすればいいこと、とわかってはいるのですが、気恥ずかしさもあり……何て言ったらいいんでしょうか、自分には無理だと思ってしまったんです。何が無理かって言うと何もかもなのですが、すみません。何だかよくわからなくなって来ました。
あの、シュミレーションモードの正しい選択通りに進めないと、やっぱり彼氏との関係ってマズくなったりするものなのでしょうか?
夜のお誘いとか断ってしまって、大分彼氏のテンションが下がってしまって気まずい雰囲気になってしまったのですが。
現実の場合も、こうも気まずくなるものなのでしょうか?
もう、どうしたら良いのかわからないです。
旅行に行って、そのまま別れる、何てことにでもなったらと思うともう辛くて。
ご回答いただければ幸いです。
@あま』
天谷の書いた文書は長く、途中から意味不明の内容であった。
それでも天谷は一生懸命書いたのだ。
(こんなもんでいい……かな。送信しよう)
天谷はお問合せ内容を送信した。
(どうか返事が来ますように)
そう手を合わせて願って、天谷はすっかり冷めた缶コーヒーをグビリと飲んだ。
コーヒーを空にすると、天谷はリフレッシュルームを出て図書館の机に着いた。
天谷が朝から陣取っているのは、白い壁際の一人掛け用の机だった。
席ごとに木製の仕切りが机にあって、落ち着いて利用できるので、一人の時は、天谷は大抵この一人掛け用の机を使う。
本さえ置いておけば、暗黙の了解で他の利用者に席を取られることは無い。
天谷の席に置かれた本は一度も読まれずに、ずっとページだけを広げられたままになっていた。
天谷は、本に手を伸ばして、やっと読み始める。
恋人アプリ・カスタマーセンターからの問い合わせの返信を待つ間、本を読もうと天谷は決めたのだ。
読み始めると、天谷は本に夢中になった。
下がる眼鏡を両手で押し上げながら本に集中する。
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