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第187話 恋人アプリやってみました26p

 天谷は直ぐにメールを開く。 『@あま様、ご連絡有難う御座います。  恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式で御座います。  お時間頂き、有難う御座いました。  ほっとされたと聞いて、わたくしもほっと致しました。  力を抜いて、お話していきましょうね。  早速で御座いますが、@あま様は、同性の恋人様とお付き合いされているということでしたが、お付き合いはどれくらいになるのでしょうか? 初めてのご旅行、ということですので、まだ付き合ってそう長くないご関係なのかな、と勝手に思ってしまったのですが。  後、@あま様は、今回、ご旅行に関して不安を抱かれている、とのことで御座いましたが、恋人様に関しては如何でしょうか?  今、恋人様に対して、不安なお気持ちや、不満などを抱えていらっしゃいますか?  差し支え無ければお答え願いたいです。  恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式』  天谷はメールを読んで考える。  考えているのは日下部のこと。  考えていると、喉がカラカラになって、天谷は、ボトルの蓋を開けてアイスコーヒーをゴクリと飲んだ。  アイスコーヒーの苦い味を噛みしめながら、天谷は赤式への返事を書く。 『赤式様へ  ご質問の答えになりますが、まず、私達は付き合い始めて半年近くになります。  高校三年の二月の中頃から付き合い初めて今に至ります。  相手への不満はありませんが、不安はいつも感じています。  何が不安かって言うと、何もかもが不安で。  何を話せば良いのか、とか、どういう態度を取れば良いのか、とか、相手が何を考えているんだろう、とか、不安だらけです。  時々、一緒にいるのが苦しくて、でも、離れるのも苦しくて、どうしたら良いのかわからなくて苦しくて、ずっと友達のままだったら良かったのかな、と思ったりして。  相手とは元々は友達だったんですけど、どうしたことか、付き合うことになって。  でも、付き合ったら付き合ったで、まだ友達みたいな関係が続いてて。  そんな関係が心地いいような、もどかしいような、そんな気分で。  そんな関係が続いているうちに、なんだか、相手の気持ちも、自分の気持ちも、わからなくなる時があって、凄く不安で。  このまま付き合っていて、いいのかな、と思ったりします。  自分のこんな気持ちを、もう、どうしたら良いのか、自分でわからなくて。  すみません、ごちゃごちゃ書いてしまって。                                         @あま』  天谷は送信のアイコンを押す。  送信した後、スッキリした気持ちと同時に、後悔の念が天谷を襲う。  自分の中のドロドロとした気持ちが赤式に……他人に伝わってしまう恐怖に、天谷は怯える。  ずっと自分の心の中だけにしまっていた感情を伝えるのは難しくて、天谷は上手く文書を書けなかった。  天谷からの返事を見て、赤式がどう思うか、それを考えると、天谷は怖かった。 (気持ちを伝えるって、こんなに大変なことなんだな)  そう思って天谷はテーブルに身を沈めた。

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