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第197話 恋人アプリやってみました36p

『膝枕なんかもなさっているのですね。  本当に微笑ましいカップル様です。  仲睦まじいご様子で何よりで御座います。  そういうことも、愛情が無ければ出来ないもので御座いますから、どうか恋人様のお気持ちを信じて差し上げて下さい。』  天谷はスマートフォンから顔を上げる。 (膝枕、俺から言いだしたことなんだよな。今からして思えば、何かあほらしいことに付き合わせちまって日下部には悪いことしたよな。膝枕って、愛情が無ければ出来ないもんなんだ? まぁ、確かに、だよな。仲睦まじいっていうか、そういうノリの合う相手とじゃ無きゃ出来ないことだよな。あの時の日下部の膝枕、気持ちよかったな。何か、ふわふわになって、途中で寝ちゃったけど)  天谷はスマートフォンに再び視線を戻し、メールの続きを読む。 『@あま様が恋人様にかけて頂いた言葉。  可愛い、だなんて、ふざけていたとしても、@あま様を愛おしく思っていればこそ出てきた言葉ですよ。  それに、幸せって、@あま様と一緒にいて幸せってことで御座いますよね。これはもう、決まりですよ。恋人様はちゃんとお気持ちをアプローチなさっているではありませんか。  @あま様が欲しいのは、愛の言葉で、それが無いのが不安なのかも知れませんが、一緒にいて幸せって、最上級の告白なのではないでしょうか。  わたくしなど、恋人にそんなことを言われた日には天にも昇る気持ちになってしまいます。  @あま様も、言われて嬉しかった忘れられない言葉だとおっしゃっておりますが、こんな風に思われていることを忘れてはなりませんよ。  @あま様は間違えなく、恋人様にとって大切な存在なのですよ。  可愛くて仕方のない存在なのです。  どうか自信をお持ち下さい。  恋人様に思われている自分を信じて、そして、恋人様の思いを信じるのです。  不安も戸惑いもあると思います。  けれど、それに勝って、ほんの少しでも、信じてみませんか。  二人の絆を。』  天谷は宙を見上げる。  図書館の真っ白な天井が見えた。 「絆」  小さな声で、天谷は呟く。  その呟きは、誰の耳にも届かずに図書館の真っ白な天井に向かって消えた。  日下部に幸せだと言われて、天谷も幸せだと答えた。  あの時の一体感を天谷は思いだす。  日下部以外は何もいらないと思えたあの瞬間。  もしも、日下部もそう思ってくれていたなら、そうであったなら。  日下部がもしかしたら、自分を愛しているかも知れないと、思ってみても良いかも知れない。  日下部が自分を愛しているかも、と思ってみても良い。  一緒にいて、幸せだと思ってくれているのなら、もしかしたら。 (もしかしたら、有り得るかも知れない?)  そう思ったら、今までの日下部の行動全ての中に、何かの合図があったのかも知れない、と天谷には思えて来て、天谷の胸はドキドキと鳴り出した。

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