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第198話 恋人アプリやってみました37p

(日下部が、俺のこと、もしかしたら……そんなこと、考えたこと無かった。そんな風に考えたこと無かったのに、急に、困る、こんなのっ)  頭の中が日下部でいっぱいで、それが恥かしくて、天谷はそれから逃げるように赤式からのメールの続きを読んだ。 『恋人様に、こんなにも愛されているのですから、ご旅行も心配する必要は無いと思いますよ。  不躾なご質問で御座いますが、@あま様は、恥ずかしいがゆえに、ご旅行での夜のお誘いがあった場合はお断りする方向でお考えなのでしょうか?  先に言いました通り、旅行での夜のお誘いは男にとって大切なもの。  おそらく、@あま様の恋人様も、一番の旅の思い出にと、@あま様を求めることかと思われますので、改めて@あま様のお気持ちを確かめたく思います。』  天谷はため息を吐き出す。 (赤式さんも大丈夫だって言ってくれてるし、旅行、あんまり心配し過ぎないで行こうかな。でも、俺の気持ち……日下部が俺のこと……なんて、本当に起こり得るのかな。そんなことになったら、やっぱり俺は……)  旅行は心配する必要が無いと言う赤式からの言葉にほっとするのと同時に、また考えさせられる天谷。 (兆に一の確率で起こったとして、断ったらやっぱり空気悪くなるのかな。それは嫌だな)  憂鬱な気持ちを残しつつ、天谷は赤式からのメールの続きを読み始めた。 『ここからは、わたくしごとで御座いますが、わたくしの大学時代の恋人との旅行の話をさせて頂きたいと思います。  これから、恋人様と初めてのご旅行へ行かれる@あま様の何かしらのご参考になれば幸いで御座います。』  いよいよ、赤式の大学時代の恋人との旅行の話だ。  天谷は真面目な表情を作り、メールを読んでゆく。 『話の前に、わたくしと彼氏とのことを少し。  わたくしと彼は、大学の先輩、後輩の仲でして。  わたくしが先輩で、彼は一年後輩でした。  付き合うきっかけは、彼からの告白でして。  @あま様が同性の恋人様とお付き合いされているとカミングアウトして下さったので、わたくしも申しますが、わたくしは男で、ゲイなので御座います。  彼は、もちろん男です。  彼とは、同じサークルで知合いまして、親しくしているうちに告白されまして。  躊躇いましたが、お付き合いさせて頂くことに致しました。』 「ええっ?」  思わず大声を出してしまった天谷は、ここが図書館だということを思い出して、直ぐに、しまった、という顔をして、周りを見回す。  幸い、誰も天谷のことを気にしている様子は無かった。  天谷は、ほっとしてスマートフォンに目を戻す。 (赤式さんが男。カスタマーセンター担当って、てっきり女性だと思ってたのに。それにしても、赤式さんが、ゲイ。そうだったんだ。何か、自分以外で男と付き合ってる人、初めて会ったから不思議な感じがする。凄い親近感湧くな)  赤式からのカミングアウトに驚きながらも、安心感を抱く天谷だった。  天谷は気になるメールの続きを読む。

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