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第202話 恋人アプリやってみました41p

 赤式のメールを読む天谷の顔は赤い。  赤式から語られる情事に天谷は眩暈を起こしそうになる。  何も起こりそうになかった二人にこんなことが起こるなんて、と天谷は思う。  おそらく、赤式も同じ気持ちだっただろう。  覗いてはいけないものを小さな鍵穴越しに見るような気分で、天谷は躊躇いながらも、メールの続きを読んだ。 『わたくしの心臓の鼓動は高鳴りました。  ある程度、覚悟はあったことですが、彼に、欲しい、だなんて、そんなことを言われる日が来るだなんてと、意識がくらくらといたしました。  覚悟はあったことですし、一応の準備もしていたこととはいえ、わたくしは躊躇ってしまいました。  何せ、初めてだったものですから。  恐怖心もありましたし、わたくしの体などで、もし彼にがっかりされたら、という不安もありましたし、パニックになりました。  でも、彼も男を抱くのは初めてで、そんな彼が勇気を出してわたくしを欲しいと言ってくれたことに、わたくしは心を打たれたのです。  それで、わたくしは、彼に身を委ねることに決めたので御座います。  今宵は心も体も、彼に全て捧げよう、と。  わたくしは彼に言いました。  彼のものになりたい、と。  こうして、わたくし達は体を繋げることになったのです。  彼は、昼間の子猫のようにわたくしに甘えていた彼とは一変、まるで狼のようにわたくしを求めたもので御座いました。  わたくしは、彼にしがみ付いているのが精一杯で。  もう百戦錬磨かのように見えた彼でしたが、しかし、男同士とは初めての彼、わたくしも初めてで、上手く行かないことも御座いまして。  でも、それすらも愛おしく感じる時間で御座いました。  ことが終わると、二人でくっ付きながらぐったりと眠りました。  深い眠りで御座いました。  このまま、離れずにずっといたいと、そう思いました。  幸せで御座いました。  朝が来たことを知ったのは、チェックアウトギリギリの時間。  二人で急いでシャワーを浴びて部屋を出たことは今では笑い話で御座います。』  天谷は、ため息と共にスマートフォンを机の上に置く。  赤式が恋人を受け入れたように、自分も日下部を受け入れられるだろうか、と天谷は考えてみる。  その答えは霧がかかったようで、出て来なかった。  そもそも、日下部が自分の体を求めることなんか、天谷は有り得ないと思っていた。  天谷は自分の手を見る。  天谷の手は、白くて、細くて、綺麗だったが、男の手だ。  何度も思うことだが、この手の指先を舐めた日下部はどんな気持ちでそんなことをしたのか、と天谷は不思議でならなかった。  ただの気まぐれ?  悪戯?  好奇心?  男の体を日下部が求めるなんてことが有り得るだろうか?  天谷は何度も自分に問いかけている。

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