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第211話 恋人アプリやってみました50p

 天谷は赤式からの最後のメールの文書を読み始める。 『わたくしの現在の片思いの恋をお気に掛けて頂きまして有難う御座います。  そうですね、片思いの恋はやっぱり辛いですね。  でも、辛さの中に、相手を思う幸せがあって、複雑な感じです。  今は、わたくしは相手の側にいるだけで幸せなんです。  今以上の関係を望もうとは思いません。  相手が笑うと、わたくしも笑う。  相手が悲しむと、わたくしも悲しい。  相手が意中の彼女のことで、笑顔でいると、やっぱり複雑ですが、相手の幸せを思うと嬉しくて。  本当、恋愛とは不思議なもので御座います。  大人になっても、こうやって惑わされ、振り回されるものなのですから。  自分の恋すらままならないわたくしが、@あま様にアドバイスをすること何て、本当は無いのかも知れませんね。  すみません、無責任なことを言って。  でも、だからこそ、わたくしは@あま様の恋の幸せを願うので御座います。  だって、@あま様は恋人様と、ちゃんとお付き合いをなさっているではありませんか。  それが、例え友達同士の延長線上のようなお付き合いだったとしても、お二人は恋人同士なのですよ。  お二人次第でこれから、ご関係はどんどん変わってゆきます。  その先に、きっと素敵なことが待っているはずですよ。  だから、ご心配なさらないで下さい。  きっと、お二人は大丈夫ですから。  恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式』  片思い中の男の複雑な思い。  その思いの後に綴られた、天谷への優しい励ましの言葉。  その言葉を天谷は飲み込んだ。  お互いの恋の話。  こんな話を出来る相手が今までいなかった天谷には新鮮で刺激的なことだった。  その気持ちのままに、これまで赤式と話したことを振り返り、天谷の目は輝き出す。 (そう……だよな。友達みたいな関係だって、俺と日下部は付き合ってるんだよな。まだ、これから……だよな、うん。日下部と、これからも、二人で……)  天谷の顔は、自然と笑みを作る。  天谷は、赤式への返事を書く。  迷わずに、躊躇わずに書いてゆく。  そして、文書が出来上がる。 『赤式様へ  赤式さん、お返事有難う御座いました。  赤式さんのお返事を読んで、大分心が落ち着きました。それに、今までのやり取りで、ずっと誰にも相談出来なかったことを話せて楽になれました。ずっと一人で、心細くて、不安で、だから、赤式さんに話せて本当に良かったです。  えっと、ギュッとされた時のこと、赤式さんの言う通りに相手が俺に対して本気であったならば、恥ずかしいですが、嬉しいです。だから、旅行の夜のお誘いも、ちゃんと覚悟しておきます。赤式さんのアドバイス、心しておきます。  それより先に、楽しい旅行になるように、俺に出来ることがあればしようと思います。  今の俺には、それが精一杯のこと。  行ってらっしゃいのキスは、すれば喜ぶ、とのことでしたが、どうしようか悩むところです。やっぱり恥ずかしくて。  でも、しなかったからといって関係が悪くなることは無いと聞いて安心しました。有難う御座いました。  俺、赤式さんの話を聞いて、やっぱり恋がしたいと思いました。  片思いの辛い恋の中にも幸せがあるなら、恋の何が幸せなのか知りたいです。  赤式さんのように恋することで色々感じたいです。  だから、頑張ってみます。  あの、それで質問なのですが、俺の相手が、アルバイトで疲れてるみたいで。  そんな相手に恋人として出来ることはありますか?  まず、そういうことから初めてみようかな、と思いまして。  お答え頂ければ幸です。                                       @あま』

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