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第231話 二人対談1p
アルバイトを終えた日下部は急ぎ足でアパートの部屋へ向かっていた。
やっと部屋に着いた頃には時間は夜の十時半を過ぎていた。
日下部はドタドタと音を立てて部屋に入り、部屋の明かりを付けると立ったまま、スマートフォンでメールを送る。
メールの相手は天谷だった。
『今、うち着いた。待たせてゴメン』
日下部は、メールを送信してから額に掻いた汗を拭うと背負ったままだったリュックを下ろして中からミネラルウォーターの入ったペットボトルを取り出し、グビグビと飲んだ。
「くはぁ」
日下部は声を上げる。
そして、ソファーにドカリと座った。
ソファーに座ると、アルバイトの疲れが日下部を一気に襲った。
「疲れたー」
一人きりの日下部は、そう漏らす。
スマートフォンが音を鳴らす。
日下部がスマートフォンを確認すると、メールの通知。
メールは天谷から。
日下部はメールを開く。
『バイトお疲れ様。疲れてるよな。本当に今日で大丈夫?』
日下部は返事を書いて送信する。
『大丈夫。天谷こそ大丈夫? 時間、約束より遅くなっちまったけど』
今日、日下部は天谷と旅行の話し合いをすることを約束していた。
しかし、日下部はアルバイト先で残業を頼まれてしまったのだ。
日下部は残業を断ることが出来ずに、天谷に残業になったことを連絡して残業を済ませ、急いでアパートへ帰って来たのだった。
日下部は疲れ切っていた。
明日も朝からバイトだ。
本当だったらもう休みたいところだ……けれど、天谷との時間は日下部には大切だった。
約束したからには、今日、話し合いをしたい、と言うのが日下部の気持ちだった。
日下部は天谷にメールを送る。
『じゃあ、今から話そう』
『うん。あの、ところで何だけど、旅行のこと、小宮には何て言ってる? いつも三人で行動してたのに急に俺と日下部二人だけで旅行へ行くだなんて、何か不自然な感じするし、何か後ろめたい感じするし。旅行のこと、小宮に何て言ったらいいのかわからなくて困ってるんだけど』
天谷から、こんなメッセージが届く。
日下部は返事を送る。
『ああ、小宮ね。旅行のこと、ちゃんと小宮に話してあるよ。実は、初めに小宮も旅行に誘ったんだよ。ほら、あいつ、仲間外れとか嫌いじゃん。そしたら、小宮、夏休みにサークルの合宿があって、サークルのメンバーと長野に行くらしくてさ。二泊三日で。だから俺達との旅行は無理だって。ノーマネーだってさ。と言う訳で心配無用』
日下部は天谷の返事を待つ間、ミネラルウォーターで喉を潤した。
たらりと、日下部の首に汗が流れる。
「暑いな」
日下部は扇風機を強にして回した。
ついでに窓も全開にして開ける。
窓から入って来る夜風は心地よかった。
冷蔵庫にアイスが入っていることを思い出して日下部は台所に向かおうとする。
すると、ソファーに置いたスマートフォンが鳴る。
天谷からのメールだ。
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