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第232話 二人対談2p

 日下部は再びソファーに身を沈めると、メールを読んだ。 『わかった。小宮、写真サークルだよな。あいつ、写真好きだもんな』  日下部は返事を送る。 『ああ。あいつがうちの大学に入ったのも、うちの写真サークルに入りたいがためだもんな』  小宮が日下部と天谷と同じ大学に入ったのは、建前は日下部と天谷と一緒の大学に入りたいから。  しかし、日下部と天谷は、理由はそれだけでは無いと考えていた。  小宮は、日下部が気が付けば、ずっと写真に夢中だった。  小宮は、初めはスマートフォンで写真を撮っていた。  それが高校に入ってアルバイトをして貯めたお金で小宮はカメラを買った。  そのカメラで日下部も天谷も何枚も写真を撮られた。  人物だけでなく、風景などの写真も小宮は好んで撮っていた。  小宮の撮る写真は中々のもので、事実、写真のいくつかのコンテストで受賞をしたりしていた。  写真を撮る時の小宮は凄く楽しそうだったり、真剣そうだったり、何か深く考えていそうだったり。  日下部達が通う大学の写真サークルは、様々な写真コンテストの受賞者を数多く出していた。  サークル出身の有名なカメラマンもいる。  小宮は自分の夢などを日下部や天谷に語ったりはしなかったが写真が小宮の心を動かしていることは日下部にはわかった。  それは天谷にも何となくわかっていて、そのことについて小宮の前で触れないことが、日下部と天谷との間の暗黙の了解になっていた。  天谷から返事が来る。 『やっぱりそうなのかな。小宮の夢ってカメラマン?』  日下部は返事を返す。 『さぁな。所で、旅行のこと。どこか行きたい所とかあった?』  日下部は旅行の行き先だけ天谷に告げていた。  泊る所は絶対に秘密。  日下部はスマートフォンを持ったまま台所へ向かい、冷蔵庫の冷凍室からアイスを取り出す。  プラスチックのカップに入ったみかんシャーベット。  右手にアイス。  左手にスマートフォンを持った日下部は足で冷蔵庫を閉める。  それから流しへ向かい、作業台の上の、赤いプラスチック製のボウルの中にある洗い上がった銀色のティースプーンをアイスを持った方の指で器用に拾い上げる。  スマートフォンが音を鳴らした。 「ちょい待ち」と言ってから、日下部は急いで部屋に戻って、テーブルの上にアイスとスプーンを置き、ソファーに座る。  そして、メールを開く。  メールの相手は勿論天谷で、内容は先ほどの日下部のメールの返事だ。 『うん。旅行先のこと。スマホで色々調べてみた。後、図書館でガイドブック見たりして色々考えた。えっと、ガイドブックで見たんだけど、白葉瀬(シラハセ)の森ってとこ。森の奥に小さな稲荷神社があって、神社の裏が直ぐ小さな滝になってるみたいで、その滝の水しぶきで虹が見えるって書いてあって、ちょっと見たいなって。後、いろは屋敷美術館ってとこ。古民家が美術館になってるみたいで面白そうだなって』

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