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吐精後の余韻にぐったりとなっていると、休ませないぞと言わんばかりにパフスリーブをずらされた。 元々大きく開いていた胸元はあっという間に露わにされてしまう。 「……ぁ」 すっかり敏感になったマツバの肉体は、まだ触れられてもいないのにそこに色づく小さな粒を際立たせていた。 「いやらしいな」 淫らな身体を揶揄されて顔が熱くなる。 でもそれは決してマツバだけのせいではない。 半年間、ほぼ毎日のように弄りたおされてたら誰だってこうなってしまうんじゃないだろうか。 しかも、それをやった張本人が目の前にいたら尚更だ。 西園寺はチラリとマツバを見上げると、まるで見せつけるように舌を伸ばした。 息を飲むマツバの目の前で、淫らに蠢く舌先がそのピンポイントに触れる。 「…ぁ…んんっ!」 高い喘ぎ声が出てしまい、マツバはハッとして慌てて唇を噛みしめた。 薄い衝立の向こうには、いつでもこちらの呼び出しに対応できるようスタッフが配置されている。 当然客や店員が間違いを起こさないように、耳をそばだてているに違いない。 西園寺が今やっている行為はオプションに含まれる行為だ。 しかし彼はオーダーもなしに始めている。 もし万が一スタッフに見つかれば西園寺は追い出されるだろうし、マツバはペナルティーを受けなければならない。 ここでのペナルティーは減給だ。 つまり報酬がぐんと減る。 それはやっぱり避けたかった。 「そうそう、そうやって耐えていろよ」 西園寺はうっそりと笑うと、舌先で転がしていた粒に思い切り吸い付いてくる。 「ぃ……んんっ」 達したばかりの鋭敏になっている肉体にそんな刺激を与えられたらひとたまりもない。 甘い声が出てしまいそうになるのを必死に堪える。 しかし西園寺はお構いなしに舌を転がし、唇で吸い付いて時折歯まで立ててきた。 生温かい口の中で縦横無尽に動き回る舌に翻弄されて、萎えかけていた股間が再びむくむくと頭をもたげてくる。 精路に残っていた残滓が先端からツツ…と垂れていくのがわかった。 まずい。 このままでは西園寺のスーツを汚してしまう。 「待ってくださ…んんっ」 慌てて制止を求めると、突然両の乳首を痛いほど抓られた。 「あぅ…」 「いつも客にこうされてるのか?」 息を乱すマツバを見上げながら、苛々とした口調で訊ねてくる。 「それともこうか?」 「あ…っあ…っ」 今度は抓られたまま揺らされて、疼痛が走る。 その痛みは快楽となってマツバの下腹部を攻撃してきた。 「や…やめ…っ…」 張り出した丸い先端からぬるついた粘液がトロリと垂れていく。 それは西園寺の見るから高そうなスーツにシミを作った。 「全く忌々しいな…」 その粘液を掬い取りながら西園寺が呟いた。 きっとスーツを汚されて怒ったのだろう。 「ご、ごめんさい」 火に油を注いでしまったような気持ちでマツバは謝った。 今日は本当にマツバにとって人生最大の厄日といっても過言ではない。 元々要領の良い方ではないけれど、こんなにいっぺんに粗相をしてしまう自分が信じられなかった。 きっともう、いや、確実に愛想を尽かされてしまったに違いない。 それだけは嫌だ、と心が必死に叫ぶ。 西園寺はマツバにとって運命の人。 ひっそりと影で咲いていたマツバを見つけてくれた唯一の人だ。 憧れや羨望、追いつきたいという気持ちはある。 マツバも男だから、いつかは西園寺のように男らしい男になってみたい。 しかし、それ以上に何よりマツバは西園寺のことが大好きなのだ。 彼をなくしたらどうやって生きていけばいいだろう。 きっとすぐには立ち直れない。 一度感情が爆発してしまうともうどうにも止まらなくなって、マツバは西園寺の前で肩を震わせながら泣いた。 「悪かった」 突然謝罪の言葉とともに引き寄せられる。 マツバは泣きながら瞠目した。 いつの間にか、西園寺の胸の中に抱きすくめられていたからだ。 「悪かった」 もう一度謝られて強く抱きしめられる。 「西園寺さ…」 ほんの少し間があって、西園寺がポツリポツリと話し始める。 「マツバが…何かきちんとした理由があってこんな事をしているのは初めからわかっていた。ちょっとズレてはいるが…お前がいつも何に対しても一生懸命なのは誰よりも理解しているつもりだ」 西園寺の言葉に胸がジンと熱くなる。 ちゃんと理解してくれていた。 彼はちゃんとわかってくれていたのだ。 それがわかっただけで充分だった。 「けれどどうしても苛々を抑えることができなかった」 抱きしめる腕の力が強くなる。 「たとえ触れられてなくても、お前の身体が小汚い客どもの慰みモノとして扱われることがどうしても許せなかったんだ。わかってくれるか?」 まるで誰にも渡したくないと言わんばかりの熱い抱擁と告白に胸が焦げつきそうになる。 これは、嫉妬というものだろうか? もしも…もしも西園寺が客に妬いてくれてこんな事をしたのだとしたら… そう思うといてもたってもいられなくなる。

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