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第5話

社内フロアに響くキーボードをタイピングする音。俺は、パソコンの液晶画面を無表情でキーボードを激しく打った。 「あの、篠原リーダー」 「ごめん後にしてくれるかな…木下さん」 「いや、この設計の確認お願いします」 「ああ、うん」 「おい……」 木下が俺のデスクに書類を叩き付けた。木下は一つ下の後輩で美人なんだが・・・ 「おっさんとそこの若造!」 「おっおっおっおっさん!?」 「バーチャルで痴話喧嘩すんな。するならよそでしろ。おっさんは、これを今日までに確認!」 「おお、分かったやっておく」 「若造はこのおっさんについてテスト日を詰めてこい!」 「……そこなら僕一人で」 「問答無用!!」 「「はい!」」 とまぁ、口の悪さが欠点で・・・ 「何笑ってんです?」 「おまえの間抜け面ウケる~~」 「超ウザいんですけど」 「黒石が悪いんだろう」 「俺はそう思ってない」 「って木下を怒らすなよ。あいつ…プログラムにわざとバグ入れたりすんだからな。俺よりエグいぞ」 「それなら経験済みなんで」 「うわ、マジか」 黒石はクールなイケメンを顰めた。相当悪どい意地悪をされたみたいだった。その事については、木下に代わって謝罪しておいた。俺と黒石は、社用車に乗り社内駐車場を出た。 「で、どこに向かうんでしたっけ?」 「オフィス株式会社」 「……オフィス株式会社」 「どうした?」 「・・・別に」 「別にって…あのな一応上司やぞ」 「・・・チッ」 「今舌打ちしたやろう! したな!」 「上司ね…干物女子の間違いじゃないですか?」 「はぁ? 干物女子?! 上司と女子…上手いやないか」 「あんたバカでしょう」 「関西人にバカゆーな!」 「着きましたよ。俺一人で行ってきます。貴方はここで待ってて下さい」 「あっそ、優秀な部下でなによりだ!」 本っ当可愛くない! 黒石は、俺に対して反抗的なのか秘密を知っているからってバカにして…俺も黒石の秘密知ってんやぞ! 確かに掃除、洗濯、食事まで文句言いながらやってくれてるからあんま強くは言えないが…… 「……バラしたろか」 「何を?」 「べっ別に!」 黒石が運転席に戻ていた。持っていた鞄を後部座席へ置いた黒石から微かに甘い匂いかする。 この匂い…女性モノの香水? オフィス株式会社の担当者って確か女性でちょっと派手めな印象だった記憶があるが、香りが移る程身に付けていたか? 密着すればいや、こいつに限って…… 「篠原さん」 「へぇ?」 何? なんや? 黒石に抱き締められてる? 「なななにすんねん!おちょくってんのか! ほんま大概にせーよ!」 「……暴れないで暫くこのままで」 様子がおかしい黒石に動きを止めた。 「どうした?」 「……担当者の…女性がボディタッチ過剰で」 「確かにな。俺も行けば良かったんだ」 「目の前で他人に触られてるとか嫌に決まってるでしょう」 「ん? なんの話しや?」 「分からないならいいです」

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