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第7話
休日、すこぶる晴れ。爽やか風が柔軟剤の香りと共に室内を通り抜けていく。ザラつきのないフローリングの感触が素足から伝わってくる。俺はいつもの定位置(ソファー)で、りんごジュースをチューチュ飲みながらポテチを食らってうっとり浸っていた。
ええわ……絶好の体たらく日和やん!
「おい、干物上司。誰が掃除してると思ってんだ! 食べこぼすなよ!」
「ご苦労、まぁまぁ座れや」
「あんたマジでムカつく! つーかもう隠そうとしないんだな」
「バレたもんは仕方ないやん? ちょっと待とけ。俺がとっておきのコーヒー入れたるから」
「出来んの?」
「任せなさい! 実家ではドリップの神言われてんやで!」
「胡散臭っ…」
「ほんまやゆーねん。見とけよクソガキ!」
俺は、勢いつけてソファーから立ち上がりキッチンへ向かった。
「ほら、出来た。飲んでみ?」
黒石の前にキノコ柄のマグカップを置いた。黒石は、恐る恐る口へ持っていき一口飲んだ。
「……うまっ」
「やろ!」
「……すき」
「へぇ?」
「ああ! ムカつくからもう一つご褒美頂戴…篠原さん」
伸びてきた黒石の手が俺の顎を持ち上げて唇を重ねた。
「んっ…おい…おちょくるよも大概にせって!」
「これでチャラにしてあげますよ。後、買い物付き合って」
「おっおお、分かった」
なんやねん…俺は、黒石のタイプじゃないって言ってたやないか……
あいつにとって揶揄ってるだけや。せやのになんで唇に触れた感触が消えへんねん。
なんやねんこれ……
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