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第12話
あれから三年の月日が流れ、九十九は18歳、雪柊は16歳になった。
九十九は四代目ルシファーの副ヘッドとなり、雪柊はルシファー期待のルーキーとして中学卒業と同時に加入を認められた。
雪柊は二年の時、九十九の跡を継ぐ形で大森中の頭になり、大森中の白石雪柊の名を轟かせた。
いくつもの悪名高いチームから声が掛かったがルシファー以外、彼の眼中にはなかった。
九十九を兄貴と慕い、尊敬と憧れを抱き、そして、ひた隠すように小さな恋心も抱いていた。
尊敬と憧れが強過ぎて、恋と履き違えてしまっているような気もした。
それでも、一緒にいればいる程、九十九への想いは強くなるばかりで、優しくされれば嬉しかったし、九十九の仕草や表情を憧れ以上の目で見ているのは認めざる得なかった。
これが、恋と言うのであれば雪柊は受け入れようと思った。
同性である九十九への思いを受け入れ難かったが、他に気持ちがいかなかった。それが女であれ、ましてや元々同性愛者ではない自分は、男にも興味を持つ事はなかった。
雪柊はそんな想いを抱えつつも、中二の時、自分を好きだと言う姉の友達と絆される形で関係を持った。
正直自慰の延長くらいな感覚にしか感じず、その後数人の女性とも関係を持ってみたものの、ただ虚しさを感じるだけであった。
組み敷いている女が九十九にされている自分と重なり、きっと、自分は九十九にこういう事をされたいのだと思うと、九十九を汚しているようで、酷い自己嫌悪に陥った。
九十九とはあれから、甘い雰囲気は一切なかったが、雪柊は忘れる事は出来ず、ずっと心の奥に深くに刻み込まれていた。
九十九の一瞬の気の迷いだったんだと、無理矢理頭の隅に追いやるようにしていた。
九十九も自分に必死に着いてこようとする雪柊を可愛がり、誰よりも目を掛けてくれ、それだけで今は充分だと、どうせ報われる事はないのだと思い、自分を言い聞かせる様に日々過ごしていた。
そして、あの時、幸田との抗争で付いた傷は消える事がなく、雪柊のこめかみから頬にかけて、十センチほどの長さで一生消えない傷跡となってしまった。
九十九は度々この傷に触れては、自分を戒めているのか、いつも悔しそうに、そして、悲しそうにこの傷に触れるのだ。
雪柊は高校には行かなかった。
一年前、父親が現場の事故が原因で亡くなり、父親が健在の時から雪柊の家庭は裕福ではなく、雪柊を高校進学させるほどの余裕はなかった。それでも母親には高校進学を勧められたが、雪柊もハナから行く気はなかったし、姉の出来が良かった為、姉にお金をかけてほしいと母には言った。
今は近くのガソリンスタンドでバイトをし、頭の良かった九十九は、地元で偏差値が高いと有名な高校に進学していた。
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