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第14話
バー・ブラックキャットに着くと、
「九十九さん!ちぃーす!」
店の外にいた数名のメンバーが挨拶する。
「玄龍はもう来てるか?」
「ええ、もう来てますよ」
中に入ると下の者は全員が立ち上がり、頭を下げる。
正面には真っ黒なライダースを上下身に纏い、顔面絆創膏だらけにした男がタバコを燻らせ座っている。
その顔の傷は先日、英信の伊武虎白と喧嘩した時の傷だろう。
黒髪を後ろに撫で付け、釣り気味の細い目の眼光はギラリといつも光り、鋭い目をしていた。
「おせーぞ、九十九」
発せられる声の低さが更にその男に迫力を与える。
太刀川玄龍、四代目ルシファー頭である。
「悪かったよ。これでも遅くなりそうだったから、雪柊に迎え来てもらったんじゃねーか」
そう言うと、玄龍は雪柊に目を向けると雪柊は軽く頭を下げた。
「ご苦労だったな、雪柊」
「いえ……」
これから幹部会が開かれる。中にいていいのは、幹部とされる五人のみ。下っ端の自分はもう用はないと察した雪柊は、店を出ようと扉に手をかけた。
「雪柊」
不意に玄龍の低い声に呼び止められた。
「はい」
「おまえもいろ」
「え?」
なぜ?そう聞きたかったが、黙ってその場に留まる。
玄龍、九十九も含めた五人はボックス席に座り、雪柊は一人カウンターに腰を下ろした。
「昨日、東京のチーム、シルバーローズの楠本から連絡があった」
玄龍が話し始めると、全員が一斉に玄龍に体を向ける。
東京のギャングチームであるシルバーローズは二代目の西条忍の代から同盟を組んでおり、お互いに何かあった時には何かと協力し合っていた。
「最近向こうで不審な動きがあるらしい」
「不審な動き?」
タバコに火をつけながら、九十九が聞く。
「内部の情報が漏れてるらしい。この前、あるチームと揉めて潰そうと計画したんだが、その情報が漏れて失敗に終わったらしい。内部の事で、楠本も下手に動けねーから、力貸してほしいってよ。で、九十九おまえ、東京行ってくんねーか?」
「ああ、わかった」
「九十九、キヨ、タカ……雪柊」
自分の名前が玄龍の口から出て、思わず雪柊は目を見開く。
「この四人で行ってくれ」
「オ、オレもですか…?」
「なんだよ、嫌なのか?」
雪柊は大きく首を横に振る。
九十九たち幹部とルシファーとして一仕事できる、こんな嬉しい事はない。
「今週末、早速向かってくれ。以上だ」
外に出る際に、後ろの九十九と玄龍を何気に目を向けると二人で声を潜めて話していた。そして、最後に九十九の目線が自分に向き、わかった、と九十九の口の動いたのが見えた。
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