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第16話

そして、シルバーローズの内部の不振な動きが何なのか、九十九たちは突き止めた。どうやら、新しくできたチームのスパイらしき者がシルバーローズに数名いた事が発覚した。そのスパイたちによって、内部事情が外に漏れていたようだった。きっちり、そのチームは九十九たちによって潰し、スパイをしていたメンバーの落とし前は楠本たちがつけ、この件は決着した。 最終日はシルバーローズの幹部と九十九達で近くの居酒屋で酒を酌み交わす事になった。 その場には、あの花村勇気も同席した。お互い顔は傷だらけで、なんとなくまだ、気まずく睨む合う形になった。 雪柊は一番隅の席に座り、ちびちびとビールを飲んでいた。九十九は少し離れた真ん中の席で楠本と談笑をしている。 「おい……白石って言ったな」 いつの間にか隣にビール瓶を手にした花村勇気が座っていた。ビール瓶を差し出され、雪柊も素直にグラスを差し出しビールを注がれそれを飲み干した。 「おめー、強いな。なんかやってたのか?」 「空手……習ってたから」 「あー、だから足癖悪いんだな」 ニヤッと花村は笑い、またビールを注がれる。 「悪かったな、女みてーだなんて言ってよ」 「いや……オレもいきなり殴りつけて悪かった」 「まぁ、このタイマンは元から仕組まれてたみてーだけどな……」 「聞いたのか?」 「ああ、さっき頭から聞いたよ。マジ性格悪いぜ、うちの頭は」 そう言って手酌しようとした花村のビールを取ると、グラスに注いでやった。 「うちのアニキも似たようなもんだ」 お互いに笑い合うと、 「オレは絶対シルバーローズの頭になる。そんで、おまえもルシファーの頭をになれよ」 「オレは……そんな器じゃねーよ」 そう言って視線をビールのグラスに落とすと、花村が雪柊の肩に腕を回してきて、さすがに雪柊はギョッとした。 「いや!おめーは絶対ルシファーの頭になる男だぜ!」 バンバンと肩を叩かれる。 「まず……九十九兄ィに認められないと…」 雪柊は苦笑し九十九に目をやると、九十九と目が合った。何か言いたげな顔をこちらに向けている。 「認めてるからここにいるんじゃねーの?」 「どうかな……」 目線を九十九から外し、そのまま目を伏せた。 「しかし、おまえのとこの副ヘッドは、相当な切れ者だな。腕っぷし強い上に、頭いいっていうか、無駄がないよな」 花村は九十九に視線を向けている。 「ああ……最高にかっこいい、オレの憧れだ」 九十九が褒められた事が、まるで自分が褒められたような気持ちになる。 「ベタ惚れだな」 揶揄うような花村の顔に、思わずドキッとした。花村の言うベタ惚れは、男としてという意味なのに、雪柊は一瞬焦りを感じた。 「そうだな……ベタ惚れだ」 色々な意味で……。 その言葉は当然、飲み込んだ。 雪柊と花村はしばし語り明かし、そして、花村は潰れてしまった。気づけば、高杉と小川は一足先に楠本が取ってくれた近くのビジネスホテルに帰ったようで姿がなく、五人程しか残っていなかった。 九十九ですら、うとうとと舟を漕ぎ始めている。 雪柊は九十九の元に行くと、 「兄ィ……立てますか?」 九十九を抱え起こすと、九十九は雪柊の肩に腕を回した。 「雪柊、喧嘩も強いけど酒も強いんだな」 席を立った所で楠本に言われる。 「そんなに飲んでませんから」 「九十九も副ヘッド形無しだな」 揶揄うように言うと、九十九の肩を叩いた。 「九十九兄ィがこんなに酔うのは珍しいです」 九十九は酒が強く、一度足りとも乱れたりした姿を見た事がなかった。せいぜい陽気になるくらいなのに、今日ここまで潰れる姿を見たのは初めてだった。 「任せても大丈夫か?」 「はい、大丈夫です」 九十九を抱え外に出る。楠本たちに頭を下げホテルへ向かってと歩いた。

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