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第23話※
雪柊が目を覚めると、左の頬がジンジンと痛んだ。
それは雪柊にとって慣れた痛みであり、それよりも瞼が重く、しっかりと目が開かない。
目の前には見慣れた背中。
九十九がベッドに背中を付け、タバコを片手に頭を抱えている姿が目に入った。
「兄ィ……」
その声に九十九の肩が揺れ、振り向くと九十九は泣きそうな顔を雪柊に向けた。
九十九は頬に乗っているタオルを避け、右頬にそっと自分の手を置いた。雪柊はその手に愛おしさを感じて無意識に手を重ねる。
「まだ……痛むか?」
雪柊はゆるゆると首を横に振り、ゆっくりと体を起こした。
「九十九兄ィ……」
体を起こしたことで離れてしまった九十九の手がまた欲しくて、子供のように雪柊は九十九手を伸ばした。
九十九はそっと雪柊の手を掴み引き寄せ、自分の膝の上に乗せた。雪柊は九十九の胸に顔を埋め、そんな雪柊の背中を子供をあやすよう何度も撫でた。
「あの時……」
九十九が雪柊の耳元で口を動かす。
「あれは……夢じゃなかったんだな」
「……」
「正直、酔ってて夢なのか現実なのかわからなかった。夢であったとしても、なんていう夢見てんだって思ったよ。男のおまえを組み敷いて口でやらせて……」
ふっ……と吐息が漏れそれが雪柊の耳にかかり、ゾクリとした。
「おまえの首の跡を見た時……夢じゃなかったんだって、気付いた。それから毎日のようにおまえの夢を見たよ。ある時はおまえがオレを欲しがってねだって、素直に受け入れてくれる時もあれば、無理矢理殴って犯すような時もあった……」
一度言葉を切り、胸元にある雪柊の髪を撫でる。九十九の声と手の感触が心地よく雪柊は目を瞑る。
「何度もあの時の事聞こうと思った。でも……怖くて聞けなかった。もしかしたら、おまえは律儀にオレの言いなりになって無理矢理させたのかもしれない……男のオレにあんな事させられて、嫌悪感抱いたかもしれない……真実を聞くのが怖かったんだ……」
九十九は本当に酔っていて、記憶が曖昧だったのだろう。雪柊が九十九のキスを受け入れ、躊躇う事なく九十九を口でした事、雪柊の表情や細かい事の記憶がないようだった。
「オレは……」
静かに目を開け、九十九を見上げた。
なんと言っていいのか分からず、結局雪柊は言葉が続かなかった。
いっそ好きだと言ってしまおうかとも思った。だが、きっと困らせるだけなのでは、という考えも浮かび、結局、言葉が出なかった。
正直、九十九の口から自分への気持ちを聞く事が怖いとも感じた。
ただ、雪柊は九十九の頬に手を当てると
唇にそっと触れるだけのキスを落とした。
「雪柊……」
雪柊はその行動に気恥ずかしさを感じて、目を伏せた。
嫌ではなかったと伝わっただろうか……。
今の自分には、この意思表現が精一杯だった。
九十九の顔が近付いてくと、そのまま雪柊の唇が塞がれた。
何度も啄むキスをされ、九十九の舌が歯列を割って入ってくる。痺れるような、それだけで果ててしまいそうな濃厚な舌使いに雪柊は九十九に身を委ねる。
そのままベッドに倒され、九十九の手と唇が雪柊の肌を這うように動き、チリチリと首と胸元をキツく吸われる。
九十九の左手は雪柊の右手を握り込み、それを雪柊は握り返した。
男の自分にそんな事をして、気持ち悪くはないのか、今日は素面で頭はしっかりしているはずだ。なのに、なぜ九十九は自分に対して性的興奮を感じているのか。
だが、九十九の舌遣いと手の感触に雪柊の思考回路は停止し、とろけてしまいそうな快感に気持ちが流されてしまう。
「雪柊……」
耳元で自分の名を呼ばれ、耳朶を甘噛みされた。思わず体がビクリとしなり、連動するように下腹がズクリと疼く。腰を掴まれ、腹筋をなぞるように舐め上げられた。
「ん……は……ぁ」
雪柊は自分の手で口を塞ぐが九十九に手を掴まれ、また唇を塞がれた。
九十九が雪柊のベルトを外し、ズボンを下着ごと脱がした。すでにいきり勃っている雪柊の中心を握り、ゆるゆると上下に動かした。下半身の水音が自分の耳さえもを犯されているようだった。
「九十九さん……もう……」
雪柊は体を突き抜けていく気持ち良さに、絶頂を迎えるだけだった。
「雪柊……」
名を呼ばれると同時に雪柊のビクンと大きくしなり、雪柊は先に九十九の手の中で果ててしまった。
九十九は、再び雪柊に重なり目が合うと同時に唇を重ねた。雪柊は九十九の背中をかき抱き、九十九の左手が雪柊の右頬に添えられる。
「この先を……求めていいか?」
九十九はそう呟き、雪柊に熱のこもった目で見る。
なんて目でオレを見るんだ……。
その目に雪柊の腰の疼きが止まらない。
「オレは出会った時から……あんたに全てを捧げたつもりです……」
「いいのか……?」
九十九は滅多に見せないであろう余裕のない表情を浮かべている。
もう一度聞かれると雪柊はコクリと頷いた。
九十九は雪柊が出したものを指に絡め、雪柊の秘部に指を当てた――
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