29 / 40

第29話※

それから九十九と雪柊は、何度も体を重ねた。 自分を欲してくれるだけで、雪柊は幸せだった。もう、九十九以外は愛せない、そう思うほど、自分の中の九十九の存在は大きくなっている。 九十九は考えてくれるとは言ったが、今のところは特に何か言われてはいない。 だが、雪柊はそれに対して何か返事を期待してはいなかった。期待していないと言えば嘘になるかもしれないが、九十九が自分を求める限り自分は九十九に応える。身も心も全て九十九に捧げたつもりだ。 九十九の為に死ぬ事すら厭わない、と思うほどに。 その決意の証として、背中に天使の羽根のタトゥーを入れた。 中心には《99》の数字。 その上に筆記体で、 《I will devote myself to 99.》 九十九に全てを捧げる、という意味を込めた。 まだ、九十九には見せてはいない。もしかしたら、また殴られ怒られるかもしれない。 その日も九十九の部屋に呼ばれ、九十九に求められた。 タトゥーを入れてから始めてだった。 向き合いながら、啄むようなキスと深いキスを繰り返しながら、九十九に服を脱がされていく。 ベッドに倒され、首と胸元には当然のように九十九に赤い跡を付けられる。それはまるで、自分は九十九の所有物であるようで嬉しい気はしたが、最近その跡を見られると周囲に揶揄われるようになってしまった。 「あ、兄ィ……あんまり、跡つけないで……」 「うるせー……」 そう言って、また首をキツく吸われる。 秘部を解されると、九十九のモノが一気に入ってくる。 「んっ!くっ……!」 何度入れられても、最初の異物感はどうしてもが拭えない。 正常位から不意に体が反転し、バックの体位になる。 「なんだ……これ……」 背中に九十九の掌の感触を感じ、そのまま撫でられる。 雪柊はハッとし、顔を九十九に向けた。 だが、顔が良く見えない。 「また、墨入れたのか……」 黙っていると、九十九にそのタトゥーを舐められた。 「んっ……!」 「99……なんて、書いてあるんだ?」 九十九はそう言って腰をゆるゆると動かし始めた。 「あ、あんたに……全て捧げる……」 九十九の動きが止まる。 次の瞬間、背中全体に九十九の体温が感じ、きつく抱きしめられた。 その勢いで、九十九のモノが奥まであたり痺れるような快感が体を貫いた。 「あぁ……っ!」 「そんなに……オレが好きか……?」 その声に雪柊は不安に駆られた。 思った以上に九十九に対して気持ちがある事が分かり、自分の気持ちが重く感じてしまったのだろうかと不安になる。 だが、雪柊の口から出た言葉は、 「気が狂うほど……好きです……」 そう、切なそうな声が洩れた。 今、九十九はどんな顔をしているのか、不安で堪らなかった。 殴られてしまうのだろうか……。 そう思うと、体が小刻みに震え始めた。 不意に体を起こされ、九十九の膝の上に乗る形で、後ろから再び抱きしめられた。 「怒って……ますか?」 雪柊の肩口に顔を埋め、首を振ったのがわかった。体を捻り顔を九十九に向けると何度も啄むキスをされる。 「おまえに……溺れ始めてる……」 そう呟くと唾液すら全て絡め取られるような深いキスをされた。 その日は、何度も後ろから突かれ、九十九に背中のタトゥーを撫でられては舌で舐め上げられる事を繰り返された。 それが無性に雪柊の欲情を掻き立てられ、いつもより快感が増したように感じ、何度も吐精した。 「もう……無理……」 九十九によって根こそぎ精液も出し尽くされた雪柊は最後、意識を飛ばした。 目を覚ますと、九十九に後ろから抱きしめられていた。 「約束してくれ。もうこれ以上、この綺麗な白い肌に墨は入れないでほしい」 九十九は少し悲しそうな声で言うと、優しく背中を撫でられた。 「はい……」 そう返事をし、九十九の方に身体を向けた。 そして、もう一度深くキスをした。

ともだちにシェアしよう!