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第39話※
一と結弦
一と結弦は授業が職員会議で早く終わった事をいい事に、今日は話題になったホラー映画を借りて観ようとレンタルショップに寄り、そのままいつものように一の家に向かっていた。
一の自宅に着くと、庭に兄のネイキッドタイプのバイクと雪柊のアメリカンタイプのバイクが並んで止まっていた。
「雪柊のアニキ来てる!」
一は浮かれたように玄関のドアを開け、階段を上がる。
九十九の部屋から音楽が聴こえてきた。最近九十九がハマっているという洋楽のR&Bだ。
ドアが少し開ていて、その時、曲と曲の繋ぎで音楽が一瞬途切れた。
「あっ……あっ……んっ……」
ドアの隙間から、艶めいた声が聞こえた。
ギョッとし、思わず振り向き結弦を見る。結弦は聞こえなかったのか、不思議そうに小首を傾けてこちらを見る。
(まさか兄貴、雪柊のアニキとアダルト見てんのか⁈)
音楽が聞き覚えのあるバラード曲に変わり、その合間に途切れ途切れの吐息のような艶めいた声が洩れている。
ドアの隙間から、そっと中を覗く。
最初に目に入ってきたのは、天使の羽根が描かれた、しなやかな白い綺麗な背中。
そのしなやかな体が、小刻みに上下に動いていた。
(せ、雪柊のアニキ……⁈)
雪柊が上下に揺すぶられ、その動きに合わせて吐息が洩れている。
「雪柊……」
九十九の雪柊を呼ぶ声が聞こえ、雪柊が抱きついている相手が九十九だとわかる。
九十九の部屋なのだから、当たり前なのだが、その光景を一は受け入れ難かった。
だが、目を逸らす事も出来ない。
「もっと……あんたを……ください……」
強請るようにそう呟くと、雪柊は上から見下ろし九十九を見つめている。
その横顔がチラリと見えて、一はその雪柊の顔にドキッとした。
白い肌は蒸気し赤みを帯び、僅かに開いた唇からは絶えず艶めいた声が洩れ、愛おしそうに九十九を見つめる色気の満ちた目。
そんな雪柊の姿が色っぽく見え、同じ男なのにとても綺麗だと一は思った。
「どうしたの?」
結弦が一に尋ねると、慌てたように人差し指を唇の前に当てた。結弦はしゃがんでいる一の上から、開いているドアの隙間から中を覗いた。
「あ、バカっ……」
結弦の手を掴んだが既に遅かった。結弦の顔が一気に赤くなる。
音楽がアップテンポな曲に変わって、雪柊の艶めいた声は聞こえなくなった。
顔を真っ赤にし、呆然としている結弦を引っ張る。
もう一度中を覗くと、九十九が雪柊の背中の羽根を愛おしそうに撫で、相変わらず下から揺さ振られている雪柊は緩やかに上下に動いていた。
一と結弦は見てはいけないものを見てしまった罪悪感で、しばらくその場で立ち尽くしてしまっていた。
一は結弦の手を引き下に降り、二人はソファに座るとしばし呆然としていた。
「あの二人……そういう関係だったんだ……」
一は混乱する頭を抱えている。
結弦は、俯きずっと口を閉ざしていたが、
「雪柊さん……凄く綺麗だった」
顔を赤らめたまま、そう呟いた。
兄の濡れ場を見て、多少のショックはある。
しかもその相手が、同じ男であり弟分として可愛がっていると思っていた、あの雪柊である。
だが、不思議と嫌悪感がなかった。
「うん……綺麗だった……」
一は先程の情景が目に焼きつき、下半身に熱が篭り始めた。
結弦がふいに、
「触りっこ……しようか?」
そう言ったのが聞こえた。
結弦の言葉に一はギョッとし、丸くした目で結弦を見る。頬は薄っすらと朱色に染めて妙に色っぽく見えて、先程の雪柊の顔と重なり一の腰がゾクリと疼いた。
そして、お互いのモノを慰めて合った。自分の手以外でされるのが、こんなにも気持ちいいものなのだと知ってしまった。
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