5 / 10
第5話
3月10日。
雲一つない、鮮やかな天色 の空が広がっている。
俺は、見上げていた顔を下ろし、腕時計を見た。
12時40分。
約束の時間を40分も過ぎている。
どちらかというと時間にルーズな俺。
大体約束の時間に遅れるのだが、これからの生活が楽しみすぎて、今日は約束の時間よりかなり早く待ち合わせ場所に到着した。
菜生が来たら驚くかなぁと、ワクワクしながら待っていたが、約束の時間になっても菜生は現れなかった。
もしかしたら電車の遅延でも起きてるのかと思い、ラ〇ンをしたのが10分前。
スマホをタップして、ラ〇ンを開く。
送ったメッセージは未読のまま。
流石に、おかしい。
約束事にはきっちりしている菜生。
時間は守るし、何かあれば必ず連絡をくれる。
事故にでもあったのだろうか。
何だか妙な胸騒ぎがする。
俺は電話帳を開き、菜生の電話番号をタップした。
そして、恐る恐るスマホを耳に当てた。
すると、すぐに声が聞こえてきた。
ただ、
「……え」
俺の耳に入ってきたのは、
「どういう…こと、だ」
菜生の声ではなく、
『こちらは〇〇〇です。お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません』
事務的なアナウンスだった。
ともだちにシェアしよう!