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第5話

3月10日。 雲一つない、鮮やかな天色(あまいろ)の空が広がっている。 俺は、見上げていた顔を下ろし、腕時計を見た。 12時40分。 約束の時間を40分も過ぎている。 どちらかというと時間にルーズな俺。 大体約束の時間に遅れるのだが、これからの生活が楽しみすぎて、今日は約束の時間よりかなり早く待ち合わせ場所に到着した。 菜生が来たら驚くかなぁと、ワクワクしながら待っていたが、約束の時間になっても菜生は現れなかった。 もしかしたら電車の遅延でも起きてるのかと思い、ラ〇ンをしたのが10分前。 スマホをタップして、ラ〇ンを開く。 送ったメッセージは未読のまま。 流石に、おかしい。 約束事にはきっちりしている菜生。 時間は守るし、何かあれば必ず連絡をくれる。 事故にでもあったのだろうか。 何だか妙な胸騒ぎがする。 俺は電話帳を開き、菜生の電話番号をタップした。 そして、恐る恐るスマホを耳に当てた。 すると、すぐに声が聞こえてきた。 ただ、 「……え」 俺の耳に入ってきたのは、 「どういう…こと、だ」 菜生の声ではなく、 『こちらは〇〇〇です。お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません』 事務的なアナウンスだった。

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