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アイシテタ

 トントン拍子に進んでいくお前の結婚話。  一馬が僕から離れていく日が、どんどん近づいてきた。 「お願いだ。せめてその日までは一緒にいてくれ。ちゃんと別れるから」 「ごめん……瑞樹にそんなことを言わせるなんて。ひどい奴だと罵ってくれ。でも……ギリギリまで君の傍にいるよ」 「うん……ちゃんと分かっている。ちゃんと別れるから。しょうがないよ。事情が事情だし……」  明日は、お前の結婚式。  仕事帰りにいつものように駅で待ち合わせをして、コンビニでビールを二缶だけ買った。帰り道はお互い無言で、白いレジ袋のカサカサとした音しか聞こえなかった。僕の中では、一馬との最後の夜を迎える緊張が高まっていた。 部屋に戻りすぐにお互いにビールを飲んでから、唇を優しく重ねた。  少し苦いキスだった。  一馬のお嫁さんになる女性には悪いが、直前まで同棲を求めたのは僕の方だった。未練がましいと思われても仕方がない。しかし最後の最後まで、せめて一緒に過ごして欲しかった。だって僕は一馬を嫌いになったわけではなかったから。  引っ越しも終わり、一馬の荷物だけがなくなったアンバランスな部屋だったが、どうしても抱かれたかった。 「最後に抱いてくれ……」 「いいのか」  まだ好きだ。  ずっと好きだ。  しかし、今日で別れる。  お互いに、切なく燃える眼をしていた。  一馬は慣れた手つきで僕をベッドへ連れて行き、そのまま押し倒した。 「アイシテル……瑞樹だけを」  あぁ……呪文のような愛の言葉を耳元で甘く囁かれ、何度お前に抱かれたことか。 「一馬……抱いて」 「抱くぞ」 「……うん」  優しい手つきで、いつもよりじっくりと身体を辿られた。一馬も僕の身体を、記憶に留めようとしているのか。 「瑞樹はいつもいい匂いがするよ。花のような……」 「ふっ……それは仕事柄だよ。生花デザイナーの先生と式場の花について打ち合わせをするのが多いから、きっと……移り香だよ」 「そうなのか……でも、これは瑞樹自身の匂いだ。瑞樹の残り香を、ずっと忘れない」  首筋を舐められ、そのまま乳首まで辿られ舌先で先端を突かれると、腰がビクビクと震えてしまった。 「あっ……んっ、もう……そこは、よせ」 「ここが感じるんだろう? 瑞樹の身体は俺だけが知り尽くしているんだ。くそっ」  きつい蕾に指を挿れられてグリグリと掻きまわされる。ゼリーによって濡らされたそこが、グジュグジュと卑猥な音を立てるのをじっくり味わうように、一馬は熱心に僕を溶かし続けた。 「そろそろいいか」 「んっ……うっ……う……」  何度抱かれても、お前のサイズを受け止めるのはキツかったよ。しかし挿入の痛みは最初だけ。乳首を同時に舐められ甘噛みされ、腰を掴まれ激しく揺さぶられると、僕の身体は一馬のために、どんどん開いていった。  僕の中に一馬の張り詰めたものが挿入され、内部に熱をジンッと感じた。  これはもう……明日からは二度とやってこない熱だ。 「……アイシテル」 「でもお前は……明日、僕を置いていく」 「……ごめん……瑞樹をアイシテタ……」

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