3 / 11
アイシテタ
トントン拍子に進んでいくお前の結婚話。
一馬が僕から離れていく日が、どんどん近づいてきた。
「お願いだ。せめてその日までは一緒にいてくれ。ちゃんと別れるから」
「ごめん……瑞樹にそんなことを言わせるなんて。ひどい奴だと罵ってくれ。でも……ギリギリまで君の傍にいるよ」
「うん……ちゃんと分かっている。ちゃんと別れるから。しょうがないよ。事情が事情だし……」
明日は、お前の結婚式。
仕事帰りにいつものように駅で待ち合わせをして、コンビニでビールを二缶だけ買った。帰り道はお互い無言で、白いレジ袋のカサカサとした音しか聞こえなかった。僕の中では、一馬との最後の夜を迎える緊張が高まっていた。
部屋に戻りすぐにお互いにビールを飲んでから、唇を優しく重ねた。
少し苦いキスだった。
一馬のお嫁さんになる女性には悪いが、直前まで同棲を求めたのは僕の方だった。未練がましいと思われても仕方がない。しかし最後の最後まで、せめて一緒に過ごして欲しかった。だって僕は一馬を嫌いになったわけではなかったから。
引っ越しも終わり、一馬の荷物だけがなくなったアンバランスな部屋だったが、どうしても抱かれたかった。
「最後に抱いてくれ……」
「いいのか」
まだ好きだ。
ずっと好きだ。
しかし、今日で別れる。
お互いに、切なく燃える眼をしていた。
一馬は慣れた手つきで僕をベッドへ連れて行き、そのまま押し倒した。
「アイシテル……瑞樹だけを」
あぁ……呪文のような愛の言葉を耳元で甘く囁かれ、何度お前に抱かれたことか。
「一馬……抱いて」
「抱くぞ」
「……うん」
優しい手つきで、いつもよりじっくりと身体を辿られた。一馬も僕の身体を、記憶に留めようとしているのか。
「瑞樹はいつもいい匂いがするよ。花のような……」
「ふっ……それは仕事柄だよ。生花デザイナーの先生と式場の花について打ち合わせをするのが多いから、きっと……移り香だよ」
「そうなのか……でも、これは瑞樹自身の匂いだ。瑞樹の残り香を、ずっと忘れない」
首筋を舐められ、そのまま乳首まで辿られ舌先で先端を突かれると、腰がビクビクと震えてしまった。
「あっ……んっ、もう……そこは、よせ」
「ここが感じるんだろう? 瑞樹の身体は俺だけが知り尽くしているんだ。くそっ」
きつい蕾に指を挿れられてグリグリと掻きまわされる。ゼリーによって濡らされたそこが、グジュグジュと卑猥な音を立てるのをじっくり味わうように、一馬は熱心に僕を溶かし続けた。
「そろそろいいか」
「んっ……うっ……う……」
何度抱かれても、お前のサイズを受け止めるのはキツかったよ。しかし挿入の痛みは最初だけ。乳首を同時に舐められ甘噛みされ、腰を掴まれ激しく揺さぶられると、僕の身体は一馬のために、どんどん開いていった。
僕の中に一馬の張り詰めたものが挿入され、内部に熱をジンッと感じた。
これはもう……明日からは二度とやってこない熱だ。
「……アイシテル」
「でもお前は……明日、僕を置いていく」
「……ごめん……瑞樹をアイシテタ……」
ともだちにシェアしよう!