4 / 11

最後の夜

 最後の夜だとお互いに分かっていたから、何度も何度も求め合った。一馬の出した白濁のものが蕾から溢れ出しても、僕は腰を振ることをやめられなかった。 「もっと……もっと欲しい」  もっときつく、もっと強く抱いてくれ。 「瑞樹……瑞樹」 「あっ……んんっ……」  お前の精を、一生分、搾り取るような熱く激しい逢瀬だった。一馬も同じ気持ちだったのか、僕の身体を明け方近くまで執拗に攻めまくった。何度も絶頂を迎えさせられ、息も絶え絶えになる程に激しく突かれ、最後には意識を飛ばした。 「んっ……」  明け方ぐったりと横たわる僕の隣から、お前はそっと離れて行った。寂しくて……お前が寝ていた場所のシーツの皺に手を伸ばし、そっと撫でてみると、まだ温もりだけは居てくれた。  そのままシャワーを浴びる水音が響き、お湯の沸く音、冷蔵庫をパタンと閉める音がして……最後にカチャンと鍵を閉める音がした。  去っていく靴音の後は、もう何も聞こえなくなった。 「うっ……」  僕はとっくに目を覚ましていたけれども、どうしても起きあがる勇気が出なかった。今起きたら、お前に泣きついて抱きついて、引き留めてしまいそうだから。  かなり時間が経ってからノロノロと起き上がり、気怠く重い腰を庇いながら台所へ行き、冷蔵庫から水を取り出そうとした時、扉に貼られたメモ書きを見つけた。  一馬からだ。 ……  瑞樹は俺にとって、ずっと水のような存在だった。  瑞樹を抱けばいつも渇いていた心が潤った。  そしていつも抱くと花のようないい匂いがして心地良かった。  だが俺はもう二度とお前を抱けない。水をやれない。  だが、瑞樹は水を忘れるな。  君を置いていく俺を、恨んでくれ。  おこがましいが、どうか幸せになって欲しい。 ……  ふっ……馬鹿な奴。  正直過ぎる所が、大っ嫌いだ。  面と向かって言えないなら、わざわざ言わなくてもいいのに。  こんな手紙を置いていくなんて、最低な奴。  でも……だからスキだった。

ともだちにシェアしよう!