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最後の夜
最後の夜だとお互いに分かっていたから、何度も何度も求め合った。一馬の出した白濁のものが蕾から溢れ出しても、僕は腰を振ることをやめられなかった。
「もっと……もっと欲しい」
もっときつく、もっと強く抱いてくれ。
「瑞樹……瑞樹」
「あっ……んんっ……」
お前の精を、一生分、搾り取るような熱く激しい逢瀬だった。一馬も同じ気持ちだったのか、僕の身体を明け方近くまで執拗に攻めまくった。何度も絶頂を迎えさせられ、息も絶え絶えになる程に激しく突かれ、最後には意識を飛ばした。
「んっ……」
明け方ぐったりと横たわる僕の隣から、お前はそっと離れて行った。寂しくて……お前が寝ていた場所のシーツの皺に手を伸ばし、そっと撫でてみると、まだ温もりだけは居てくれた。
そのままシャワーを浴びる水音が響き、お湯の沸く音、冷蔵庫をパタンと閉める音がして……最後にカチャンと鍵を閉める音がした。
去っていく靴音の後は、もう何も聞こえなくなった。
「うっ……」
僕はとっくに目を覚ましていたけれども、どうしても起きあがる勇気が出なかった。今起きたら、お前に泣きついて抱きついて、引き留めてしまいそうだから。
かなり時間が経ってからノロノロと起き上がり、気怠く重い腰を庇いながら台所へ行き、冷蔵庫から水を取り出そうとした時、扉に貼られたメモ書きを見つけた。
一馬からだ。
……
瑞樹は俺にとって、ずっと水のような存在だった。
瑞樹を抱けばいつも渇いていた心が潤った。
そしていつも抱くと花のようないい匂いがして心地良かった。
だが俺はもう二度とお前を抱けない。水をやれない。
だが、瑞樹は水を忘れるな。
君を置いていく俺を、恨んでくれ。
おこがましいが、どうか幸せになって欲しい。
……
ふっ……馬鹿な奴。
正直過ぎる所が、大っ嫌いだ。
面と向かって言えないなら、わざわざ言わなくてもいいのに。
こんな手紙を置いていくなんて、最低な奴。
でも……だからスキだった。
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