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妄想がとまらない

僕は久留米浬委。17歳で学園の2年。一時間ほど前、愛しの尚史くんから連絡が入った。 『S市に来ました』 尚史くんがS市!!今、僕が在学してるラフィース学園の所在地に尚史くんが居る。空気がいつもとなんだか違うのは尚史くんの体臭が僕のところまで爽やかな風に乗って運んできていくからだ。 もう授業どころじゃなかった。近藤せいせいの上半身を使った大げさなジェスチャーで薄い毛髪が動くのをハラハラと心配する余裕もない。 授業が終わるまで15分……僕は苛立ちと居ても立っても居られない気持ちに遂に仮病を使ってしまった。 『プチプリが腹痛!俺が保健室に付き添うよ!』 『マジか!プチプリの朝食を作った奴は誰だ!血祭だ!!』 『上月さんだよ~浬委ちゃんの胃袋担当だもん』 『そうか。上月副会長なら違うな!』 プチプリなんて朱里が言うから同学年でも言われてしまう。それもクラスの周りが勝手に盛り上がっているけど……君たち授業中だよ。けど、僕は黙って教室を抜け出すことに成功した。 2年の教室は3階なので普段のようにもったり歩いていると尚史くんが来てしまう。なので、僕は数メートル先まで誰もいないことを確認して廊下を走ることにした。走るのは苦手だけど、尚史くんの歓迎のためだよ。僕が尚史くんを学園で最初にお迎えしたい。 尚史くんと遠距離時は寂しい思いもしたけど、侘しい妄想は今日でお別れ!尚史くんと寮ではもちろん同室になれるように寮長と相談して一緒にしてもらったよ。ここで僕たちは同棲を始めるんだよ?いざと言う時のために新しいパンツを12枚もネットで注文しておいてよかった!それと……ムフフフフ。 尚史くんは僕のハニーでお嫁さんだから、初夜はロマンチックに演出したいなぁ。 えっちな話は生徒会長の朱里先生担当だ。さすが当学園のプレイボーイいろいろあんなことやこんなこと教えてもらったけど…ム。誰が実演でって言ったんだ!!アイツ、不届きに僕の尻を狙ってるからな――お…僕は攻め要員なんだから忘れないでほしい。 エレベーターを待つのがジリジリするので階段を走って降りた。 髪がぐるぐるになってまでなびかせて、それも階段を走ってるなんて……自分でもおかしいけど、自然な気持ちから湧き上がる行動だった。 今は、まだ授業中なので僕の普段の姿を知ってる生徒に見られる訳じゃないので良しとしよう。 2階に降りた時に何故か生徒会長の朱里の姿が見えた。なんで廊下でふらふらしてるの?生徒会長特権でも使ってるの? そんなのは気にしないで彼の横を走って通り過ぎようとしたら朱里に声を掛けられる……。 「浬委か。お前らしくないな、そんなに紅潮してどうした、俺を追いかけてきたのか?健気な奴だな」 「……」 全力で無視をして行こうとしたら足を引っかけられそうになった。 「…もー…急いでるから走ってるんだよ!」普段の声より低めに出てしまった。 「俺を無視するからだよ。ああ…例の彼が見えるんだったか?」 「分かってるのなら邪魔をしないで!」 橘 朱里(たちばな しゅり)。この学園の生徒会長で理事長の息子でもあってそれから、僕の変態な従兄弟だ。 「変態ならお前も負けてないだろうが。ハハハ」 高笑いをされてハラが立つなぁ!!僕は尚史くん一筋なんだから! そのあと、1階で風紀委員長である槇尾先輩にも会ってしまったら、驚いたことに尚史くんとばったり遭遇していた。 残念だったなぁ……僕がエントランスで待ち構える予定だったのになぁ。 なま尚史くんの素顔と声を聴けて緊張感がぶるっとやってきて、そのあとは手足が同じく出そうなほど浮かれていた僕だった。 エレベーターに乗るまでは……。

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