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18 ファディ

(浬委視点) ピンポーン ドンドン (はぁー!!だれだようぅ!?あのうざったらしいインターホンのドア叩き二重のせ……!) 「チッ」つい舌打ちしちゃったよ。尚史くんに聞かれちゃったかな……。 ピンポーン ドンドン (はぁぁ~~) 「……尚史くん、ちょっと待っていてくれる?」 可愛い尚史くんがまったく抵抗もなく僕の腕の下にいるのに……忘れず唇にちゅっとキスを落として、空気を読まない訪問者を恫喝しに向かった。 ドアを開ける前に、何となく訪問者は分かったので恫喝じゃなくて他人の振りをしてやろう。 「どなたですか」瞼を皿のようにして相手を射抜いた。 「こっわっ!目ぇこっわ!」 「立て込んでいます。後にしてください」 そしてドアを閉めようとしたら足で遮られた。 「櫂矢、足癖が悪いですよ?」あ。名前言っちゃった。 「聞いたよ。今朝、姫のプチプリが授業抜け出してサボったって。颯爽として走ってる姿も目撃されていてさ、なんか学園中に広がってるぜ?ご乱中とかなんとか!」 「……ただ、お腹が痛いシナリオを作って授業を抜け出しただけなのに。大げさなんだなぁ」 ドアのすぐ玄関には櫂矢こと佐伯櫂矢(さえきかいや)が居て、僕の同年の親友であって悪友で。美少年でモテてるけど『黙ってれば麗しいんだがな、おしい。』なんて朱里は櫂矢にも下心ありで言う。千歳のハニーなんだから怒られてしまえばいいんだ。 「で、来たんだろオマエの婚約者(ファディ)、一週間前からそわそわしてたもんな。到着日教えてくれねぇし……どんなヤツ?みたーい」 僕を遮って尚史くんを見ようとするので僕は阻止した。 「櫂矢こそ授業どうしたのさ、寮なんかに来て」 「ナニ言ってんのオマエ、もう放課後だぜ。もしや時間も忘れて今までセック…『ドンッ』…痛てぇ」 櫂矢のせいでそれは……っ! 「みんなにも、櫂矢にだってもちろん紹介はするよ、でも今日着いたばかりだから後日でと思ってるんだ。だからまたね、バイバイ」 僕は早々にお邪魔虫の櫂矢を払いのけようとするけど、なかなか帰らないんだから。 今の尚史くんは上半身がちょっと乱れてて櫂矢に見せられる訳が無いの! それにみんなに安心して紹介するには…しょ…初夜って儀式を終わらせないと僕たちの正式な付き合いが始まらないじゃないか。 僕はこれから、尚史くんを……覚悟を決めてるんだから!! 「あ。」 突然、櫂矢が声を上げた。 尚史くんが寝室から出てきたようで櫂矢が見てしまった。 「み、見た?」 コクンと肯いてる。 「ちょっと想像してたのと違うな……ん?どっちがどっち?」 「見ればわかるだろ?おれがダーリンなんだから」 「……これは早くみんなに紹介した方が良いんじゃねぇか?明日学校来たら大変だよ。お前もハニーも」 そんな事を言うと不安になる。 だから、夕食を兼ねてみんなを集めてもらって夕食会をすることになった。 僕一人で守れると自負しているけど、学園でのみんなの力も強い。 ファディ(婚約会)までこぎ着ければ、尚史くんは学園で認められる僕の婚約者(パートナー)になる。 この学園には婚約会というイベントの一環が年に一度行われている。 学園の教会で、限られたカップルにファディの神聖な儀式を迎えられて、ラフィース学園で婚約したパートナーには『別れない』ってジンクスがある。 まだ、尚史くんには伝えていない。 これは僕の我がままなのだと分かっている。 血筋は残せないけれど、尚史くんとなるべく形のあるものを残していたい。

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