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25 聞いていられない
オレはその場から立って、意味もなくミニキッチンへと足を進めていた。
「お、気が利くな転校生。俺はアイスコーヒーが飲みたい」
別にあなたの飲み物を取りにキッチンに来たつもりはないし、オレはここから動く気にもなれない。
そう心で念じて小さなカウンターの端に見えないように俯いて体育座りをした。
浬委さんのとても親しそうな人らしいからオレは邪魔をしないつもりで……。
「図々しいっ!もう、戻っていいよ。僕は朱里に伝言を伝えたし、こんなのタダのめまいで大丈夫。それに尚史くんがいるから…アッ…!?」
浬委さんの声が高く張り上がったので、俯いていた頭を見上げたら謎のイケメンが浬委さんを横抱きに抱えていた。
「何するのさ!馬鹿、降ろせ!!」
「そのやんちゃな口、どうにかならないか?俺がお前をベッドに運んでやるって言うのに」
「そんなの頼んでない!!」
「動くな落ちる。俺はお前を落とすつもりはない」
「おまえこそ、その草生えるセリフどうにかしろっ!」
「ははは。じゃあ、俺におやすみなさいのキスをくれたらもっと艶っぽい台詞に切り替えてやるぞ?」
「……」
たぶん、浬委さんを黙らせたその表情は真っ赤に染まっているんだろう、難なく言えるめちゃくちゃ男前でカッコイイ台詞……逆立ちしたってオレには似合わないし、言えない言葉。
寝室のドアを浬委さんを抱き上げながらも片手で開けて入っていく……。
こ、こんなことされていいの?
浬委さんは体がまだ動かせないままなのに……。
オレはどうしたい?
サルは強いオス猿を見かけたらいくら自分の彼女でも強いオスだと認識したら譲って逃げてしまう。
今のオレは限りなくそれで……でも、でも、オレは浬委さんを取られたくないよっ
「……!」
スクっと立って寝室の方に小走りで様子を見に行った。
寝室に目をやると、浬委さんをベッドに寝かせていた謎のイケメンがベッドに寄り掛かって顔を近づけていた。
「り、りりり、浬委さんから離れろーーーーっ!!!」
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