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28 我慢て辛い
(浬委視点)
どうして、僕は尚史くんの前だとこんなにオドオドしてしまうんだろう?
こんなの僕じゃないんだ!
朱里の行動にすぐに反応できなくて二度までもあんなところを尚史くんに見られて、誤解されて……言いたいことも言えてない。
尚史くんが怒るのも無理が無い。
僕は余りにも浮かれすぎているのかな……。
だって、夢にまで見た尚史くんが学園に来て、手が届いて抱きしめられる距離に居るんだよ?
一緒にお風呂に入って真っ裸になって全てを曝け出して……尚史くんは男の僕を受け入れてくれた。
その喜びは今まで生きてきた中で最上級の幸福で、生きる道しるべになった。
尚史くんとずっと一緒に生きてゆきたい。
尚史くんと生きていけるんだと思うと、男に生まれてきても良かったって思う。
今は、場所を選べば同性でも結婚が出来る。そんな世の中になった。
僕にとっての『ファディ』は、僕たちの本当の未来でもあるんだ。
そのことを、これからの事を尚史くんと語り合いたいのに、僕はどうやら一人で絡まっている。
「尚史くん、妄想してごめんね?……僕はもっと待たなくちゃいけないことがあるよね」
尚史くんに、もし嫌われたら、愛想を疲れたら二度と会いたくないと言われたら、きっと僕自身が許せなくて、きっと生きてゆけない……。
僕は寝られなくて、深い夜、ソファに寝ている尚史くんのところに行った。
何度か寝がえりをしたんだろう形跡があって、尚史くんはやっと眠りについたんだろう。
僕は尚史くんに跪いてスヤスヤ眠りについている顔を眺めた。
尚史くんはこの学園に居るような煌びやかな雰囲気の人ではなくて、僕からしたらとても癒し効果があって何度見ても飽きない、そして守ってあげたくなるような雰囲気の人。
そして可愛い人。
前に彼女がいたと正直に教えてくれた。でも悲しい別れがあってきっと尚史くんは傷ついたんだろう。
「その彼女は見る目がないんだよ、本当の尚史くんを知らないなんて馬鹿だよね」
僕は父のパーティでどこかのお嬢さんと知り合うことはある。紹介は10本の指で収まらないけど、その付き合いは家同士の関係だから割り切っている。ちゃんと僕は尚史くんに操も立てているし、ちょっと高級なお茶を飲むだけだから。
この学園では何故か、僕は男ばかりに妙にモテる。男子校故なのか、趣向なのか考えたくない。
でもね、僕には永遠に変わらない好きな人がいるからと皆に言っているので、告白されたら即断っている。
その噂があるからか、ファンクラブとかお付きとか妙な人たちに支えられているけれど、今はそれさえも気怠い。
「……り、い……さん……」
尚史くんの寝言、僕の名前を呼んでいた。
まだ、嫌われていないよね?
手が届きそうなくらい、すぐ近くにいる。
手を、指を、絡ませることが出来る、少し動くと触 れてしまうような距離なのに。
でも今は触 れない。
「触れないのって、辛いなぁ……」
ストンっとソファに背凭れて、僕はパンツに自分の手を入れると萎えてるモノを弄った。
寝ている尚史くんの前で、僕は……。
僕のは小振りだけど、でも、ちゃんと尚史くんを想って勃起するんだよ?
「…んっ…な、おし、……んん…っぁ……」
僕は、自分のモノを摩って果てた……。
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