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29 なんだか仲直りの朝

オレはまず、思い違いをしていた。 私立ラフィード学園は完全なる男子校で女子なんてのは誰もいなかった。 良く隅々まで案内書を見なかったオレが悪かったけど、でも、男子校か共学くらいはわかる筈だと思うんだけどな――脳内での『共学』って決めつけは恐ろしい。 浬委さんは昨日出会った時と同じ制服を着ていて、やっぱりズボンを履いている。 雰囲気は中性的にも見えるけど、白の制服を着た浬委さんは素敵な男性に見える――キラキラ王子様的な感じだけど。 オレは似合うのかな。学ランだったし白いブレザーの制服なんて敷居が高いし、スラックスは黒だからこれならシャツと組み合わせて見慣れた姿になりそうだけどなぁ。 まだネクタイが結べなくてもたついていると浬委さんが慣れた感じでキュッと結んでくれた。 「はぅ…尚史くん…ウチの制服とても似合うよ!カッコイイです。どうしよう正視できないですよ……っ」 浬委さんは照れているのか両手で目を覆った。その仕草の方が、か、可愛いです、浬委さ……! 「浬委さんも、その……カッコ…可愛いです!」 「なおしくーんっ」 「わわっ?!」 がばっと浬委さんはオレの首に手を回して抱きしめる。 浬委さんの匂いがする……いい匂い……お、男の人でも香水って使うんだなぁ。 「尚史くんに、このタイピンを渡しておきます」 そう言うと黒地にピンクの紋章のような模様が施されたネクタイピンだった。 エンジ色のネクタイにこのネクタイピンを付けられて、「これはお守りだよ、僕のと一緒なんだ」確かに、浬委さんのネクタイにも同じのが付けてある。 本来はネクタイピンで学年別がわかるカラーになっていて、2年は黒色らしいけどピンクの模様は特別の色らしいとのことで。 良く分からないけど、浬委さんとお揃いで頂いたものだから大切にしようと思った。 ピンポーンとチャイムが部屋になった。 「朝食だ」 浬委さんは呟いてパタパタと玄関に駆けて行った。 そういえば朝食は食堂で食べるんじゃなかったかな?でも、時計を見るともうそんなに時間は無かった。 玄関には制服を着た生徒が何かを手に持って浬委さんと対面している。 また浬委さんの友人なのかなと思っているとオレを呼ぶ声がして、傍に行ったら身長が高くて涼やかな切れ長の目で純和風的な人がいた。また違った美形だけどここの学園って美形の生徒しかいないのかな……。 「初めまして。僕は浬委の友人で上月千歳と言います。昨日はゆっくり休めましたか?」微笑み方は静かで柔らかい人。 「あ……はいい。オレは、あ、僕は玉井尚史と申します!よろしくお願いします」ぺこんぺこんと何度もお辞儀をした。 昨日の謎の従兄弟の人と違って、オレの中で好感が持てた。 「千歳は料理やお菓子がとっても上手なんだ、それでいつも朝食を持ってきてくれるの。これ全部千歳の手作りなんだよ!野菜が多めだけどね」 「そうですよ、浬委は偏食だから僕がちゃんと管理してるんです。玉井さんもご一緒にどうぞ、二人分をご用意してますからね。では、僕はこれで失礼するよ」 「うん。ありがとう、千歳、また」 「うぉーい、俺の紹介……!」 もう一人、後ろに居たようだけどドアが閉まってしまったので顔は見れなかったけど、聴いたことのある声ではあったと思う。

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