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31 浬委さんは人気者

先ほどもそうだったけれど、浬委さんと一緒に寮を出て校舎へ向かう間には生徒たちも居るわけだけど……。 「おはようございます、プチプリ」 「おはよう」 「浬委姫、ごきげんよう。今日のあなたも可愛いらしい」 「ありがとう」 「プチプリ、朝から顔を見れて今日は良い日になりそうだよ」 「だと良いね」 殆どの生徒が浬委さんに挨拶と軽く会話を交わしている。浬委さんも慣れているのか返事をしている……学園で浬委さんはとても人気者だと知った。 「尚史くんの前でプチプリとか姫なんて呼ばれるのは恥ずかしいな……」ぼそっと俯き加減でボヤいていたけれど。 それどころか、凄い人気ぶりに驚いています。それに浬委さんの真横で歩いているオレには、全く気にされていないって言うか視野にも入っていないようです。まるで空気のような……そんな事を思うのはちょっと妬けちゃうのか、それとも疎外的に感じているからなのか。 オレは転校生だからしょうがないのだけど。 「尚史くん大丈夫だよ、僕が付いているから。だからそんな顔をしないで……」 ハッとして顔を上げた。オレは自分の心情を顔に出していたのだろうか……恥ずかしくなった。 「だ、大丈夫です!オレ、昔から雑草のような感じなので……っ」 そうなんだ、踏まれたってどうってことない……! 「雑草だなんて!……尚史くんは花に例えたらリンドウのような人です。誠実で凛としていて、でも可愛らしくて素敵ですよ」 そんな言われてぱぁぁぁとオレが真っ赤になるような事なのに、浬委さんが先に赤く頬を染めるなんてズルいです! 解けていた手がスルッと結ばれて何事もなくって感じで、相変わらず浬委さんは他の生徒の挨拶を交わしながら校舎に入ることになった。 オレは始終、俯いていたんだけど。 「久留米さん、おはようございます」 「おはよう、松井」 校舎のエントランスで眼鏡を掛けていてなんだか天才真面目君のような風貌の生徒が浬委さんに声を掛けていた。同じく浬委さんのファンの生徒なのかと思ったけどちょっと違うようだった。 「尚史くん、残念だけど僕はA棟の教室なんだ。尚史くんはB棟の教室に行かなけれなならないので、彼、松井は学年総長なのでお願いしたんだよ」 浬委さんとオレは学科が違うので、浬委さんはA棟の教室、オレはB棟の教室となるらしい。 「でもね、中休みの長い休憩時間には一緒に会おうね~!それとランチも、もちろん一緒だよ」 浬委さんは手をブンブン振って名残惜しそうにしながら別の階段に向かうことになった。 オレの横には、天才真面目君の松井って人が教室を案内してくれた。 無駄口はしない主義なのか無言で後を着いて行くことになったけど、なかなか緊張するなぁ。

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