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33 授業中は浬委さんでいっぱい

初授業なのに、気になって仕方がない。 何がというと……まぁ、それは。 チラッと窓の方を見ると、同じく振り向く……浬委さん。 テレパシー内蔵されてるの? 『尚史くん大丈夫だよ、僕が着いているから。』 確かに、今朝は浬委さんに励まされたけれど、着いていてくれるというのは休み時間の事かと思ってた。まさか、クラスの違う浬委さんを授業中も見れちゃうなんて……! 片手で小さく降る浬委さんにどうしたらいいのか、口を手で押されるしかないのだけど。 今朝の事を思い出してしまう。 オレは目覚めるとリビングのソファに寝ていたのを気が付いて上半身を起こしたら、浬委さんが同じソファの横で俯いて寝ていた。 び、び、吃驚した!!り、浬委さん……!? 顔をオレの方に向けてスヤスヤと寝息をたてて寝ている。 「浬委さん……」 オレは昨夜、浬委さんに嫉妬して卑屈になって一方的に浬委さんを責めたことを言ったのに。 オレに寄り添って来てくれる……浬委さんは優しい。オレに優し過ぎですよ……。 規則正しい息をした浬委さんの揺れ動く頬に、オレはチュッと唇を落とした。 「ん…」 え?お、起きてた?キスしたのバレた?! 「なおちー…うふふ…おしいー…」 はぁ……寝言? 「……も、もう心臓に悪いって……っ」 ずり落ちているブランケットを浬委さんの肩に掛けてオレはソファから静かに降りると、朝の生理現象だ、絶対にそうなのだと言い訳をしてトイレに篭ったのだった。 軽やかなチャイムが鳴って、結局初授業は浬委さんを窓から見て浬委さんの事を考えて妄想なんかして終わってしまった。 「ああああ、違う~」 駄目だよね、こんなんじゃあ!! 「玉井くんってさ、ずーと授業中、Ⅰ組見てたね?」 そう声を掛けられたのは後ろの席の人だった。

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