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38 浬委姫がご乱心?
席に着くと、ドタドタドタとまるでギャグ漫画の表現にあるような肘や脛をテーブルにぶつけながら二人組がやって来た。それもこの席に向かって。
あっ、もう一人は躓いて転んでる……!
見知った顔なので、まさかと思うけど2年V組のクラスの人かもしれない。
「佐潟っちゃんじゃない?コケてるの松井総長っ!!あはは」
「自尊心なくしたような走りで来たな。松井総長は手と足が一緒だし……」
二人の言いようが酷い。
「瀬川ぁぁぁ、笑い事じゃないって!!なんか凄いことになってるんだけど!ウチのクラス!!」
「なにさ?前髪乱して結構デコ広いんだね、佐潟っちゃん」
「っさいなー!あ!!玉井、ちょちょっと来てくれ!!あ、イや今は行かない方が良いのか??」
「え、オレ?」
「馬…鹿者。来てくれた方が……良いに決まっている……だろ、その為に我々は呼びに来たのだ」
松井くんはきっと弁慶の泣き所をうったのだろうか、脚を押さえながらも涙を堪えているようで打ったところを見ていたから辛い。
「あの、オレに用なのかな?」
「浬委姫がご乱心なのだ!」
ええ!?
それはどういうことなのかと口に出そうとしたら、瀬川くんが先に口を開いた。
「なになに浬委姫乱れちゃってるの~?」
「触手が何とかってウチのクラスに殴りこみに来てる感じ。玉井をどこにやったって涙ぐんでいてさ、可愛いんだけど残ったクラスの奴ら人質だよ」
「デンジャラスだね、浬委ちゃん。面白いから行って見よう」
ガタンと食卓テーブルから立ち上がる中川くん。悪ノリをしてないかな。
それより、どうして浬委さん……!?しょくしゅって、なんのことなの?
オレもとても心配で、中川くんの後についてみんなで食堂から出た。
教室に駆け込むと、教壇の前に浬委さんが立っていて黒板にクラスの名前をチョークで記入していた。
半数くらいか、クラスメイトは各自机……じゃなくて床に座り挙手をして自分の名前を言っている。
「永谷、だね。では次!」
浬委さんが永谷とキコキコとチョークで書いた。大小不揃いだけど可愛い文字だった。
何をやっているんだろう?思わず呆然としてその光景を見ていた。
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