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39 浬委さん妄想が過ぎます

「それじゃこの紐で各自、手を縛ってよ。逃げても無駄なんだよ?こうして君らの名前を書いたんだから」 前列から白い紐を配ると、何故かみんなの手に紐を括らせて縛り上げている。 皆、抵抗も無く……。 「本当は首に巻きたい気分だけど、こんな細い紐じゃつまらないから」 声も、表情も、言葉も、いつもの浬委さんに見えない。 どうしたの?なんでそんな事をするの? 「あのー、浬委姫…」 「姫じゃない!!早く縛りなよ」 「は、はい!浬委さん、あの……た、玉井くんが」 オレはドアの前で硬直してしまい声さえも出なかった。すぐ傍にいるクラスの人と目が合って……。 「尚史に君たちのヤったことは俺は許さない。嘘だと言ってもダメなんだよ?見ていたんだから!」 ビシッと腕を伸ばしてオレの席を指さす浬委さん。 もう駄目だ、みんな良い人たちなのにこんな事をして、何を誤解をしてるんだ!? 「浬委さん、やめて!!」 ガタっと体が前かがみになったけど、浬委さんに向かって叫んだ。 今の浬委さんにオレの声は届く――? 「あ!尚史……くんっ」 気が抜けるほどの普通の声でオレを呼んだ。 「尚史くん、解放されたんだね!?」 でも表情はこわばっている。 「どうしてこんなことになったの?浬委さん!」 「僕は見ていたよ。尚史くんが触手みたいなモブらの手で触れられて至る所を責められていたでしょう?苦しかったでしょう?」 「え……?」 ごめん浬委さん。いろいろ意味不明な話で……事情が分からない。 「も、妄想なんかじゃないよ!?すぐに助けられなくてごめんね!2~4時間も一人で耐えていたんだよね!何処かに監禁されて恋人失格でごめんね……尚史くんっ」 オレのブレザーの襟を両手で掴んで小刻みに震えながら青白い顔をした浬委さんにクラッとした。 「妄想が過ぎますよ、浬委さん……」

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