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42 浬委のせいいっぱい

2年V組の廊下を出てずっと真っすぐ走って角まで来ると広いフロアに出る。その先はA棟に繋がる廊下――オレは足を進めてその先に向かおうとした時、大きな柱の傍に僅かな窪みのある場所を視野で捉えた。普通に歩いていたら気が付かない場所のようなところ。 「浬委さん?」 なんだかそこで浬委さんが蹲ってるように思った。思い込みでもあったけど。 そっと近づいて名前を呼んだ。 返事は無いけど誰かがいる気配がした。 柱の方から覗き込むと、そこにはスマホを抱えて小さく蹲ってる浬委さんの姿が確かにあった。 「浬委さん……」 顔を上げようとしない浬委さんだけど、ぴくッと肩が震えているのが分かった。 泣いてるのかな……どうしよう。 オレは返事をしない浬委さんの目線の高さに腰を下ろすと正座をして座った。膝の上で握った拳は少し震える。 「あの……ごめんなさい。感情的になってあんなことを言ってしまいました」 「……」 「き、嫌いなんかじゃないんですっ……違うんですっ……ただ、浬委さんがどうして関わりのないクラスの人にあんな……拘束のようなわからない事をするのか分からなくて、驚いて悲しくなって……っ」 「……」 「あ、遊びだとしてもですっ」 クラスの人たちは遊びだと思っていたようだけど……。 ふさっと浬委さんの動く動作が耳に伝わって、浬委さんの腕が静かに動いて伸びてきた。 浬委さんの両方の腕はオレの肩の方に廻されて引き寄せられた。前屈みになって胸が近づくその感触にドキっとしていたら耳元で少し熱の含んだ声で告げられた。 「遊びなんかじゃないよ」 次は、聞き取れるかわからないような小さな声で呟く。 「尚史は俺のだ」 目を真っ赤にして――。

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