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優しいひと
端的に言えば、津本とは何もなかった。
あの後、三歳はベッドの上で
優しく抱き締められ、
切々と謝罪をされた。
玲の恋人と出会ったゲイバーには
知人の付き合いで行ったこと。
スキンシップが多いのは
男性を恋愛対象として
見ていないからだということ。
ホテルに来たのも、
ただ帰るのが面倒で、
もっと飲みたいと
思ったからだということ。
飲んだあとはいつもそうで、
誰かと一緒に宿泊するのは
初めてだったが、
朝まで一緒に飲むつもりで
同じ部屋をとったということ。
すべて、三歳の勘違いだった。
津本は三歳とそういうこと
したかったんじゃなかった。
そもそも三歳相手には、
そんな気持ちになれない。
ほんとにただ
夜を明かすだけのつもりで
ここに来た。
惨めだった。
三歳は泣きじゃくりながら、
優しく抱き締めてくる
津本の身体を押し返した。
「っお、俺の方こそっ、
ごめ、っなさい。俺っ、
こんな、勘違いして、
こんなことっ、ごめんなさいっ。」
それでもなお、
津本は三歳の背を
トントンと叩いて
宥めようとしていた。
「気持ちわるっ、かった、
ですよねっ、ほんと、に、
…っ、ごめんなさい。」
少しの沈黙の後で、
津本ははっきりと告げた。
「そんなことないよ。
悪いのは俺の方だ。
勘違いさせるようなことした。」
その言葉を聞いて
津本さんは悪くない、
といい募ろうとして
三歳が見上げたとき
津本はまた口を開いた。
「あー、でも
ジムにはもう行かない方がいいかな?
顔会わせるのとか、嫌だと思う?」
三歳は慌てて否定した。
「嫌っ、嫌じゃない!
ジムには来て下さい。
これまで通り、
津本さんが嫌なら俺、
顔会わせないようにします!
だからっ、これまで通りがいい、」
そう告げれば
津本はまた困ったように笑う。
「わかった。それじゃあジムは
これまで通りに使わせてもらうよ。
できれば三歳くんとも、
いつもみたいに話したりしたい。」
三歳はそれ以上なにも言えず、
ただ泣きじゃくりながら頷くだけだった。
津本はどこまでも優しく、
夜通し三歳の背を叩いて宥めてくれた。
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