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第4話
「克己は、男に告白されても、平気なわけ?」
「平気。っていうか、男だからダメとか女だからイイとかじゃなくて……相手による、かな。……由晴は?」
「お、俺は。……あ、そうそう、克己、あのいちご大福食った? 美味かったか?」
「何の話だよ」
「俺さ、いちご大福好きなんだ。けど、大福ならなんでもいいわけじゃない。あの購買の、いちご大福が、とにかくすげえいいと思ってて、その、好きっつーか」
「ああ、良かった。由晴もあれ、食べたんだね。僕の分しかないんだったら悪いなって思ってた」
「え、いやっ、食ったことないけど」
「は? 食べたこともなくて好きって、どういうことだよ」
「克己が好きそうだから」
「僕が好きそうだから?」
「克己が好きなもんは、大体美味いし。好きなもん食ってる克己を見てるのが好きだし。だから俺、克己の好きそうなもんは好きだ」
「なんだよ、それ」
「克己がこの学校がいいっつったから、俺もいいと思ったし」
「……由晴って、僕に影響され過ぎじゃない? もう、いっそおまえもくるくるパーマにしちゃえ」
「俺も克己みたく可愛かったらそうしたかったよ。けど、似合わねーもん。だから」
「……だから、金髪?」
「そう。天パに対抗できるのはこれだろって」
「対抗してたのか」
「あ、違っ!! どっちかつーと、お揃いにしたかったっつーか」
「だいぶ違うと思うけど。ていうか、男子高校生がお揃いとかちょっと寒い」
「じゃあ、がっつりお揃いにしなくて正解だったな」
「ふはっ」
「なんだよ、その笑い」
「由晴、大福好き?」
「え? おう、好きだよ」
「僕が大福が好きだから好きなわけ?」
「まあな」
「大福が好きな僕が好き?」
「……ああ」
「大福が嫌いな僕だったら?」
「おい、何言わせる気だよ」
「言えったら」
「すっ……好きだよっ」
試験前の一週間は部活動はお休み。だから今日の君たちは朝だけでなく、帰り道も一緒なんだね。猫背気味の君と、ブカブカの制服の克己君が仲良く並んで校門を抜けていくのを見かけたよ。ああ、もしかして、君が猫背になったのは、そうやって小柄な克己君の表情 を見たくて、少し前かがみになるせいなのかな。克己君より君の表情のほうがくるくる変わるけれど。でも、今は珍しく克己君の顔も真っ赤だね。何の話をしてるのかなあ。校門から出てしまうと、僕にはもうその声は聞こえない。
「やっと言った」
「大福の話じゃねーのかよ」
「ね、由晴」
「今度は何」
「うちでいちご大福食べよ。もらったの、もったいなくて食べてないんだ。半分こにしてさ。……好きなんだろ?」
「ああ、好きだ」
しばらくして君の金髪が元の色に戻った朝。
一緒に登校してきた君たちは、愛しそうにお互いを見つめあってから、それぞれのクラスに向かって行く。
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