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王道な異世界にトリップ-1

耳元で叫ばれた声に目を覚ますと、ふかふかのベッドの上に寝かせられていた。叫び声が誰かなんて疑わずと転校生だった。 階段から落ち、保健室最悪でも病院にいると思ったけれど見回した限り違うらしい。それとも今はこんな豪華絢爛な病室があるのだろうか…何か汚したり壊したりしそうでベッドから降りる気にもならない。そんな事を考えてしまう自分は小心者なのだろうか、転校生は遠慮なく壁やらカーテンやらおいてある壷やらを触っている。おい、壷を叩くな! ハラハラしつつも見守る事しか出来なかったけど、やめさせるため声をかけようとした時、重そうな木の扉が開いた。その時転校生は壁にかけられていた絵を指さして笑っていた。 「それは俺が描いたんだがなぁ…そんなにおかしいか?」 やたらと良い声で喋るその人はとてつもなくイケメンだった。まぁ転校生もイケメンだし、会長も副会長も会計もイケメンなんだけれど、種類が違うイケメンだ。会長は日曜の朝に戦っているヒーローみたいなイケメンで副会長は着物が似合いそうなイケメンで会計は歌って踊ってそうなイケメンだ。このたとえ方は姉に好評だったのであっていると思う。ちなみに転校生はカリスマ店員って言われそうなイケメンである。生徒会に比べると少し一般人ぽい。まぁ、俺は説明する必要もない一般人代表 ワンコ なわけだけれど。そして今入ってきたイケメンは…油田とか持ってそうなイケメンだ。ちょっと強そうで腹筋はきっと割れているに違いない。ちなみに会長の腹筋は綺麗に割れているのだけれど、くすぐったいのか触ろうとすると逃げられる。 そんな事を考えているうちに転校生はイケメンの腕に縋りつき「なぁ、俺腹減ったんだけどー」と甘えていた。昼飯食ったばかりだろ!と思ったけど、俺はどのくらい気を失っていたのだろう…? 転校生を自分の腕から離しながら「わかった。食事の準備をしよう。」と出て行ったイケメンはすぐに戻ってくると「食事の準備が出来るまで少し話をしようか。」と俺がまだ出ることが出来ていなかったベッドに腰を掛けた。 色々と今関係ない事を話す転校生の口を手で押さえるという物理的に黙らせたイケメンは何となく気づいてはいたけれど、違ったらいいなと願っていた事を頭を下げ謝った後に話し始めた。 「気付いたと思うけど、ここは言うならば異世界だ。呼び出したのは私達。何のためかと聞かれたら生活のためと答える。ここの世界は君たちのいる世界より少し遅れている。文明にしろ思想にしろ芸術にしろ全てが遅れている。そして一番の問題は私達にはそれを発達させるという思考がない。今のままでも生活できるのだから何もしなくてもいい。何故かそう考えるようにできている。それではいけない事を知っているのはごく一部でさらに理解できているのは王家…それも数人だけだ。」 「なのに遅れているのは少しだけなんですか?」 口を手で覆われている転校生は苦しいのかイケメンの腕を叩いているのに無視して話し続ける。 「その為に定期的に異世界から人を呼んでいる。その時によって違うが何かしら伝授してもらいこの世界も少しずつ成長してきた。何でも良い。些細なことで良い。この世界のために何か教えてはくれないだろうか。」 そう言って頭を下げたイケメンに俺は何も言う事が出来なかった。何でも良いと言われても俺はただの高校生だ。得意なものも趣味もなく、ただ毎日を消費していただけだ。俺には荷が重すぎる。ここにいるのが俺以外の生徒会役員であったなら教えられることがあるだろう。だけど、俺には無理だ。 どうやって断ろうか考えていると、扉がノックされ「お食事の準備が整いました。」と落ち着いた女性の声が聞こえた。 抑え込まれていたはずの転校生はその声に飛び上がると扉の方へと駆け出した。いつも思うけど、どこにそんな力があるのだろう。そんな事を考えながら予想以上にふかふかした毛足の長いカーペットの上をこけないように慎重に歩きながらイケメンのあとを追った。

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